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歩みは止まることなく  作者: いし
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1.綺麗なノート

小説を書くことはこれが初めてです。

誤字脱字や文法におかしい表現があれば、ご指摘お願い致します。

高校3年になる俺は、お母さんに進学塾に通いなさいと言われた。嫌々ながらお母さんが勧めてきた塾の体験授業を受けに行って、1番後ろの端の席に座って授業開始を待っていた。




学校にはない真っ白な机と列ごとに色分けされた背もたれの椅子という、慣れない教室の風景に緊張していると、だんだんと周りの席が埋まっていった。きっと80人はこの空間にいるだろう。さすが進学塾だと思った。




ふと隣の席に目を向けると、女の子が椅子の背もたれに寄り掛かりながら下を向いて寝ていることに気づいた。俺はそれを少しの間眺めていた。すると彼女は突然口を開いた。


「…なんでそんなに私を見るんですか」


半分上の空になっていた俺は、少し恐怖を感じているようなか細い声にハッと反応し、慌てて言った。

「い、いや、こんなに人がいて緊張とかしないのかなって思いまして…」

その子はそう聞くと、なにも返答せず曇った顔つきで前を向いてしまった。

俺はその子をチラチラと横目で気にするようになっていた。



声は作ったような違和感のある声ではなく、透明感のあるとても可愛らしい声だった。

ストレートで少し色素が薄い長い髪に、前髪はぱっつんではなく綺麗に横に流していた。顔は可愛いというより綺麗という感じだろうか。どちらにせよ整った顔で好みの顔だった。




そんな風に彼女を横目で観察していると、先生が教室に入ってきて数学の授業を始めた。高1、高2の内容が90分を使って全て終わった。体験授業なので一科目しか受けていないが、正直今まで人並みにしか勉強してこなかった俺は、全く授業についていけなくて板書するだけで精一杯のまま終わってしまった。この塾に入っていいのだろうかと不安になりながら、疲れ切ったように帰る準備をしていると、さっきの隣の女の子が話しかけてきた。


「北高の方なんですね。授業中、少し気になったので制服の襟にあるバッジを見てしまいました、すみません。」


俺は驚いて少し体を引きそうになってしまった。しかし、その軽く恥ずかしそうに困っている顔を見て慌てて口を開いた。


「いやいや、そんな気にしないでください。えっと、あの、君はどこの高校なの!?」


やらかしてしまった。名前を聞いていなかったせいで、失礼な呼び方と話し方を突発的にしてしまった。しかしその子は、なにも気にする様子はなくすぐに答えてくれた。


「私は西高です。それと、私の名前は三枝佳奈さえぐさ かなって言うの。あ、えっと、あの、すみません…」


佳奈自身も勢いが余ってなのか、不意にタメ口をきいてしまったせいですごく顔を赤くしていた。俺はそんな様子を見て、愛おしく感じていた。

今思うと、俺はすでにここで一目惚れをしていたのかもしれない。

俺はそんな佳奈を見て、少しフォローするように言った。


「じゃあ…三枝さん、同い年なんだしタメ口で話そうか!俺は、佐藤穣さとう みのる。さっきの授業、全然ついて行けなくて自分がすごく馬鹿なのがよくわかったよ。この塾についていけるレベルになれば、大学なんて合格出来ちゃいそうだ。なんだかちょっとやる気出てきたから通うことにするよ、三枝さんは?」


授業についていける自信なんて少しもないけど、佳奈がこの塾に通う事に賭けて俺は宣言していた。

そしてなにか荷が降りたかのようにホッとした様子の佳奈は、教室の窓から照らされる夕陽に当たって凄く輝いているように見えた。そんな彼女が柔らかい笑顔になってこう言った。


「じゃあ…佐藤君って呼びますね。私も全然勉強できなくて。さっきの授業ちゃんと聞いてたんですけど、全然頭に入ってないです…。でも、佐藤君も同じだったんだって思ったら不安が少し取れました。私もここに通おうと思います…!」


全然敬語のままじゃんって心の中で突っ込みを入れたが、俺はその天使のような佳奈の笑顔に完全に見惚れていた。




その後、佳奈は何かを思い出したかのように慌てて帰る支度をして、軽く会釈をしたのちに帰ってしまった。その慌ただしい支度の時、佳奈がノートを畳んでカバンにしまう所を俺は見ていた。机の上に置かれていた畳む前のノートは、最初のページが開かれていたのに、なにも書かれていない真っ白なままだった。


しかしその時の俺は、佳奈と少し話せたことで頭がいっぱいでそこに疑問を感じる余裕なんて無かった。

自分のペースで書いていこうと思っています。

よければ応援よろしくお願い致します。

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