四話 いつの間にか逃げてました
「じぁさ、一緒に逃げてくれない?」
渾身のキメ顔で誘った。何をするにしても協力者がいないとできないし。
「なんで~~ねぇ、分かりやすく説明してくれな~~いと」
結果は目に見えていたけど、やっぱ自分でするしかないよなあぁ~~! でも、何か知ってそうな人をほっときたくないなぁ。
決めた。
あることに思いついた僕はさっさと王宮へ戻っていたったのだった。
◆◇◆◇◆
「今回の報酬、メイドを一人頂きたい。それと、家を買えるだけのお金だけで十分です」
「なんと……それだけでいいのか、ちっと欲がなさすぎと思うが」
魔王を倒したんだ、どんな無理難題も覚悟していた王様にとっては目を丸くするようなことだ。
「良いのです。元々私は民衆のために戦ったのです。だから、これからは民衆のためになる政治をして下さい。それが、私の願いであります」
「つかぬことを聞くが、ソナタの思う民衆のためとはいったいなんだね」
「困っている人に寄り添う政治をして下さい。ゼロにしろとは言いません。人は見えないところで悩みを抱えているものです。ですが、その人たちに逃げる場所を作ってほしいのです。王様、貴方にはそれができます」
「なかなか有望な国民がいたものだ。ますます惜しい」
と、王様は笑ってくれた。結果、俺はお金とメイドの両方を手に入れたのだった。
◆◇◆◇◆
「よろしくお願いいたします、ご主人様」
字面だけ見ると一度は言われてみたい言葉だが、顔がともなっていない。殺気のようなものを感じる。
「町で色々買いたいものがあるんだ。手伝ってくれるか?」
「はい」
町で人気の僕は狐のお面を被ることにした。
「おいおい、聞いたかよ。この間の勇者様。報酬をほとんど受け取らず、王様に渡したらしいぜ」
お、お。僕のことを噂している。
「何だそれ、美談じゃねぇか」
聞いていてついついニヤついてしまった。
「あんま噂に流されんなって。どうせ偽善者だろ。こっそり金もらってるオチだって」
「でもさ、王宮を出て行くらしいぜ。俺だったら絶対残るな」
「疑ってばっかじゃ楽しくねぇだろ。せっかく勇者様がみんなのためにやってくれたことなんだ。俺はスゲーと思う」
なんか胸が熱くなってきた。人に褒められるっていいな。
「だから、これをネタに飲みに行こうぜ。勇者様のバカっぷりは盛り上がりそうだ」
せっかく感動したのに、最後複雑な気持ちにさせないでくれますかねえぇぇ!!