3PEACE
翌日、残り少ない学業をこなしながら、眠りについてしまった。
授業の方は既に復習のようなことばかりでつまらない。
平凡すぎて、平凡なことに飽きた。
何か刺激が欲しかった。
けど、そう簡単に刺激なんて手に入らない。
だから、ちょっとだけ、刺激を手にしようと思った…
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■コ コ ロ ノ カ ケ ラ■
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帰り道、本屋に立ち寄る。
店内に入ると、すかさず睨みつけるような目つきで、でも顔は固定して、客の振りをして、監視カメラの場所を把握した。
そこから死角をみつけ、目星をつけると、1冊の本を手に取り、その死角に向かった。
辺りの客の状況、店員の動きを目で追いながら、チャンスを伺う。
何度かチャンスはあったが、恐れや罪悪感から逃してしまった。
けれども、その時がとうとうきた。
今しかない!
そう思ってバックの中に詰め込んだ。
平常心を装いつつ、店内を軽く物色した後、店を後にした。
…簡単だった。
思っていた以上に簡単に出来た。
癖になりそうな自分が少し怖かった。
でも、それ以上に自分の欲しい物がいつでも手に入る快感は、忘れられなかった…
その帰り道、後ろから声をかけられた。
「…涼君」
店員が気づいて、追っかけてきたのかと内心ビクついた。
しかし、後ろを振り向くと昨日の少女が立っているではないか。
手にはクマのぬいぐるみ。
そういえば、名前教えたっけ…?
「今日も、遊ぼう」
彼女は無邪気な笑顔で言った。
だが今はそんな気分じゃない。
「ねぇ、今日は無理なんだ。もしも…もしもだけど、これからずっと遊ぶ気でいたいなら、いつもは無理なんだ」
彼女は顔を伏せて、ションボリとしたおもむきでクマのぬいぐるみを抱きしめた。
困ったな…
「じゃっ、じゃあ…毎週土曜はどう?」
彼女の顔は急に輝きだした。
クマのぬいぐるみを更に強く抱きしめて。
「ウン!いいよ!!」
そこで彼女はバタバタという足音と共に人ごみの中に紛れていった。
「友達とか…いないのかな……?」
この時こんな約束さえしなければ…
あの子の事をもっと調べていれば…
無能な自分を助けてやりたい。
過去に戻りたい。
全てを…やり直したい。
それとも、接し方を変えなければ、もっと違ったのかな…?