fragment-3
「はぁーはぁー…待った?」
私のために彼は走ってきてくれた。
嬉しいな…
「ううん」
嬉しくて、ギュッとクマのぬいぐるみを抱いた。
「今日は何して遊ぶ、涼君?」
「その前に、名前聞いてなかったから名前、教えてくれる?」
「っえ…」
私に名前なんてない……
そんなこと聞かないでよ…
■ココロノカケラ■
そうだ、あの時殺したあの親父の娘…
確か…
「…チリ…塚本 チリ…」
「あっ、あぁ、じゃあ今度からチリちゃんって呼ぶね?」
「ウン!」
よかった…この場はしのげて…
とにかく今日は遊ぼう。
彼の手を引いた。
「アレ…アレからしよ!」
指さす方向にはシーソー。
それからもいろんな遊具で幼稚な遊びをした。
けれども彼とならこんな幼稚なことは楽しい。
この時間を共有することがとても嬉しい。
こんな彼を手放したくない…
午前の部の遊びが終わると、近くに青いレジャーシートを敷きはじめた彼。
「…何してるの?」
「一緒にご飯食べよ?作ってきたんだ」
そういわれ、レジャーシートの上に座った。
「靴を脱いでから入るんだよ?」
土足じゃだめなの?。
「そうなの?」
不思議に思いながらも言うことを聞いた。
「はい、これがチリちゃんの分」
弁当をジッと見つめた。
彼は弁当の中身をほおばった。
「おいしいよ」
ああいう風に食べるのか…
一口、口に運ぶ。
「…おいしい」
「だろ?これは俺が朝早く作ってきた―――」
彼が今日の朝のことを語り始める。
どうでもいい話だったけど、飽きはしなかった。
そしていつの間にかに、空は夕焼け色。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうだね」
そうだ、プレゼントのこと忘れるところだった。
くまの人形を前にさしのべた。
「…?」
彼は困った表情を浮かべた。
「あげる」
「っえ?でも、これって大切な人形とかじゃないの?」
顔を横に振る。
「大丈夫だから、受け取って」
私からのものなんていらないの?
「ありがとう」
そういわれ別れを告げられると、少し嬉しいようなさびしいような気がした。