雨の中
雨の降る中俺は家を飛び出した。
「ここはもう自分が住めた場所じゃない」
俺は家を出て当てもなく歩いた。俺は知った道をただただ続く限り歩いた。
小さいころ親と遊んだ公園
小学校で友達と走って帰った道
中学校で泣く泣く帰った道
高校で彼女と周りを気にしながらも手をつないで帰った道
20を目の前にして俺は自分の人生と自分の今を見つめた。
「俺は間違えた」
今の大学生活、今の家
すべてが最悪だった。
自分を壊し、自分を見失い、自分に嘘をつき、自分をだましているこの日常
嫌気がさした
ただただ歩く
段々見覚えのない道に入っていった。
ふと目の前に現れた橋
下を覗くと今の俺に一番ふさわしい〝死”という道が現れた
俺は迷いなく選ぶ
橋の手すりに手をかけよじ登り、空中に足をほおりだして座る
「やっと楽になれる」
空中に身を投げようとした時、ふと頭をかすったものがあった
自分が今、一番好きなものの顔
唯一の癒しであり、助けであり、自分が自分でいられる場所
それを作りだしていてくれた彼女を
俺はもう動けなかった
うなだれる髪から楽な道へと水滴が垂れる
俺は死ぬことさえできない愚か者だった