水色の部屋
敬愛する和泉ユタカ様のエッセイ『もふもふ日記』より、吹雪様を特別ゲストとして、お招きさせて頂いております。
和泉様には、許可を頂いております。
おはようございます。また見学にいらっしゃって下さったのですか。ありがとうございます。
いいえ。暇ですとか、物好きですとか、微塵も思っておりません。お客様あっての私共の会社でございます。
今日はなんでも、社長が感謝を込めて感想をお書きになられる日だそうで、早くから張り切っておられました。今ですか? 今社長は好きな作家様の作品を、これでもかと読み込まれておいでです。
社長曰く、『残念な脳みそでは、一度読んだだけでは理解出来ない。読んで読んで、読みまくってようやく感想を書けるのだ~!』だそうです。
このように社長がお読みになられた作品から、感想やコメントを書く為にのみ、特に印象深かった方々がお見えになる事がございます。
ええ。以前お話致しました、書いてはならない方々ですね。社長の作品には登場させられませんが、感想を書くに当たって作品から連れてこられてしまいます。と、申しますかコピーですね。社長が連れ出している間、対象となる作品から、いなくなる訳ではありませんので、ご安心下さいませ。
写真や挿絵の方の場合は、そのままのお姿で。文章しかない場合は、社長の妄想のお姿で、こちらに来られます。ですから、他の作者様がご覧になられたら、一言だけでなく、言いたくなられるでしょうね。
幸い、こちらを見られる事はございませんので、私もホッと致しております。
さて、社長が感想を書く間のみですが、連れてこられた方々にご滞在いただきますのが、あちらに見えます〈水色の部屋〉でございます。今はまだ、どなたもお見えにはなっておられません。
ご覧になられますか? どうぞ、こちらでございます。ええ。居心地良くお過し頂く為に、私もできる限りのお世話をさせて頂きます。
あら? 丁度いらした様でございます。少し失礼致します。
「いらっしゃいませ」
「クウン、クウン」
この方はもしや……ええ。勿論私も存じ上げておりますとも。社長の大好きなエッセイに、お写真が載せられていらっしゃいましたから。長めの耳、雪の様な惚れ惚れするお身体、確かお名前は……
『ふ~ぶ~き~ちゅわ~ん♪♪♪』
え? 社長?!
『会いたかった! 会いたかったわ! ふ~ぶ~き~ちゅわ~ん♪♪♪』
「社長? 何ですか、そのサバのよみすぎな、まるで10歳のお子様みたいな姿は! おまけにヒラヒラのピンクのドレスに、くりんくりんの巻き毛!」
『だぁってぇ~、ふ~ぶ~き~ちゅわ~んに嫌われたくないじゃない!』
「もう、しっかり怯えられていらっしゃいます! とっとと感想を書いてらして下さい!!」
渋る社長を追い出して、フルフル震えるお姿に悶えながら、吹雪様を〈水色の部屋〉へとご案内致しました。
「大丈夫でございますよ。社長の感想が送信され次第、お帰りになれますからね。あ、もう書けた様ですよ。では、こちらの扉から。どうぞ、行ってらっしゃいませ~」
はあ。無事にお帰り頂いた様で、私も一安心でございます。
はい。今旅立たれた扉、金色のあのドアが、外へと旅立たれる方々が、必ずお通りになられる〈金色の扉〉でございます。
こちらの扉から旅立たれる度に、社長も私もその旅路の安全をお祈りさせて頂いております。
無事に、沢山の方に少しでも幸せをお届け出来ます様に、と。
何ですか、少しお疲れになられたのでは? ここで、一旦休憩に致しましょう。お茶の用意をして参ります。どうぞおくつろぎ下さいませ。
和泉様、寛大なるお許しを頂き、本当にありがとうございました。
そして、〈水色の部屋〉の名前に快くお名前を貸して下さった、水色彩夏様にも心から御礼申し上げます。
お二方のおかげで、本当に助かりました。どうもありがとうございました。
お二方共に、素敵な作品を数多く執筆なさっておられます。まだ未読の方は、是非お読みになって下さいませ。
次回は最終回となります。宜しければ後一話、お付き合い下さいませ。