悲劇 ver.夏輝
私は今、ピンチです。
なんで、こんなことに?
楽しく学校で、友達とおしゃべりして…放課後、泉ちゃん達にカラオケ誘われたからカラオケに行くはずだったのに。
目の前には、知らない男の人が4人います。
「それじゃ、自己紹介しよう‼
俺、渋谷 祐希です‼
バンドやってます‼担当はギター‼」
「日野 海です。
渋谷と同じバンドで、ベース弾いてます。」
「有元 光‼
ドラム担当だよ‼甘い物大好き‼」
「谷神 光佑
こいつらのバンドで、ボーカルやってます。」
間違いなく合コンだ…騙された‼
「村重 泉です‼
いずみんって呼んでね‼」
「東野 紗由でーす。
よろしくお願いします‼」
「えっと…野村 乃蒼です。
運動が好きです?」
「なんで、疑問形(笑)
最後の子は、名前なんていうのかな!?」
わ、私の番⁉
「ほら、夏輝の自己紹介する番だよ‼」
「なつきちゃんって言うの?」
「…山本 夏輝です。」
「よっしゃ‼いい感じに盛り上がってきたとこで、俺とデュエットする人‼」
あははと、みんな笑ってるけど私は笑えない。男子と関わらずに生きて行こうと女子高にしたのに、合コンに連れ出されてしまった。最悪だ。
「夏輝大丈夫?」
「のあちゃーん‼大丈夫じゃない(泣)
乃蒼ちゃん、知ってたの?」
「いや、知らなかった…帰りたいとこだけど、盛り下げることはしたくないから、もう少し我慢しよう?」
「うん…。」
どれくらい、耐えればいいのか。泉ちゃん達は、ノリノリだな…前から彼氏ほしいとか言ってたもんね。
「野村ちゃーん、歌おうよ‼」
「あ、でも…」
「私のこと気にしなくていいよ、乃蒼ちゃん」
「う~ん、夏輝ごめん‼すぐ戻るから」
乃蒼ちゃんとは、小学校からの付き合い。大事な親友でご近所さん。ずっと、私に気を使ってばっかりだったから、これを機に彼氏とか作ってほしいな…。
「ねぇ、山本さんは歌わないの?」
男子接近‼ど、どうしよう‼シカト…は、駄目だ。
「わ、私、歌下手…だから」
「ふ~ん…」
我ながら、無様な。でも、これで向こうに戻ってくれれば…あれ?
「と、隣座るの⁉」
「うん、ダメ?」
「ダメ、じゃないけど…向こうのほうが楽しいよ?」
お願い、向こうに行ってください‼
「山本さん、一人じゃ楽しくないでしょ?」
「私は、平気だから‼」
「…もしかして、男苦手?」
「え⁉いや、その~…」
「ぶふっ‼図星かよww」
笑われた…しょうがないでしょ‼苦手なんだから‼
「心情を察してくれたなら、向こうに行ってください。えっと…」
「谷神光佑です。ねぇ、なんで男苦手なのに合コンに来たの?」
「合コンだってこと知らないで連れてこられたの。もう、ほっといてください。谷神くん。」
「へぇ~。じゃ、なんで男苦手なの?」
「もう、ほっといて‼」
やば…怒鳴っちゃった。
「乃蒼ちゃん、泉ちゃん、さゆちゃん。私、用事思い出したから先に帰るね。」
急いで、カバンを持ってカラオケから出た。帰り道、私の気持ちは罪悪感でいっぱいだった。