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石の少女と謎の男

その日の夜の空は雲が1つも無く、少しの白もかからないその暗いキャンバスは満月の輝きをいっそう際立たせていた。


その日僕は早めに眠りについた。最近よく眠れていないのも理由の1つだが、何より夢の正体を自分なりに突き止めたかったという思いが少なからずあったからだ。

裕治の影響のせいかもしれないが、あいつと同じだとは思われたくない。

あいつの好奇心は病気レベルなのだから。ただ、普段は疑問にまでおもっていたあいつの好奇心でさえ今回の僕にもなんとなく同感できていた。



目をつぶり、意識が飛ぶと僕は最近のワンパターンな夢の世界へと誘われた。


いつものように目の前には石が出現した。

だが、今回の僕は今までとは少し違う。

その石に興味を持った。その石のことを知りたいとおもったのだ。

すると夢の中の石は突然輝きながら1人の少女へと形を変えた。

ここは夢の中だ。何が起ころうと不思議ではない。

だから僕は現実よりも落ち着いていられた。


…テ。…スクッテ。コノセカイヲ…。


今の僕には分かった。

その少女が「この世界を救って」と僕に頼んでいることが。


「僕はどうすればいい?どうすればこの世界を救える?」


以外と僕は少女の頼みを親身になって聞いてあげた。

普段は考えもつかない自分の自然な行動に僕自身が驚いていたくらいだった。

でも、心の中でなんとなくこの少女を信じなければならい感じがしたのだ。

それは人間の持っている6つ目の感覚から感じとったものだろう。

根拠は必要ない。理屈ばかりのロボット運動にはちょうどうんざりしていたところだ。

直感だけで動いてみるのも悪くないだろう。


…ツヨク…オモッテ…。ソウスレバ…ヘンカク… デキルカラ。


『強く思って。そうすれば変革できるから。』

僕はこのように解釈した。


少女の真意は分からなかったが、少女が僕に言った言葉だけは心に刻んでおこうと思った。



目が覚めると僕は早めに学校へ向かった。

非勉強人間がとるとは思えない行動だった。

しかし、今日だけはなぜか早く学校に行かないといけない気がしたのだ。


案の定、校門の前には2人の生徒が立っていた。

どちらも知っている生徒だった。


1人目、これは見なくても分かっていた裕治。

そしてもう1人は同じクラスの女子『天宮(あまみや) (しずく) 』であった。


僕たち3人は小学校からの仲で、互いの性格や行動などは手に取るようにわかる。


「遅いぞ遥希。」


「ホントあなたは昔からのんびり屋さんね。」


「ほっとけ。」


待ち合わせもしてないのに散々な言われようである。


「それよりどうしたんだよこんな朝早くに…」


「夢にあの石が出てきたんだよ。」


「私も。」



話を整理していくと、2人も僕と同じ感じでこの場に赴いたらしい。

だから理由は明確ではない。だが、2人も同様に何かを感じたのだろう。


僕は夢に少女が出てきたこと。

そして彼女が僕に世界を救ってくれと言ったことを2人に話した。


「私はその少女に遥希と裕治を支えてあげてって頼まれたよ。」


「俺は遥希と雫、そして俺の3人ならこの世界を変えられるって言われた。」


なんと2人も少女に会っていたのだ。

この時点で僕は確信した。

少女の言葉には意味が存在することを。


結果、僕たちは石と少女に関する情報を交換するだけで他には特にすることもなく、3人は教室へと向かった。




僕たちの教室の窓の外には毎年この季節になるとツバメたちがこの場所を好んで巣を作る。

今年も立派な巣を作り上げたわけだが、今日はなぜかツバメたちが姿を見せることはなかった。


何かがおかしい。


僕は今日1日の雰囲気に違和感を感じていた。


あまりに静か過ぎる…


嵐の前の静けさというやつだろうか

まるで今にも天変地異が起こるかのように。



すると突然、床が震え始めた。



う、嘘だろ…


それは通常の地震とは全く違ったものであった。

横揺れではなく、縦揺れに近い。


「なんだ?これ…」


僕たちの足元に透明な床が出現した。

その床は次第に上へと上がり始めた。

まるで巨大なエレベーターにでも乗せられたかのように

僕たちは天空へと近づけられていった。


「みんな何かに捕まれ!」


悔しいが今はこの事象に従うしかない。




しばらくすると、エレベーターは速度を落とし、ある程度のところでその場に浮遊し始めた。



不思議な光景だった。もといた場所が下過ぎて見えない。


「どうなってるんだよ。」


「遥希ー!無事か?」


「うん、裕治も大丈夫そうだな。雫は?」


「大丈夫よ。なんとかね。」


とりあえず、今目の前に起きている非日常的な事象を整理する必要があった。


「あの隕石と何か関係があるのかな?」


「わからない。でも、現時点で考えられるとしたらそれしかないな。」


雫の言うことは最もであった。

少なくとも僕たち3人は間違いなく、あの石とあの少女が絡んでいると思った。



生徒たちが困惑している中、1人の男がやってきた。彼は全体を黒いマントで覆い、マスクをしていた。


「皆さん、こんにちは。私の作りあげた世界はお気に召しましたか?」


男は何かを知っているような口調であった。


「ふざけるな!早く下ろせ!」

「元に戻せ!」


生徒たちは男に向かって非難浴びせまくっていた。


「直しますからそんなに慌てないでくださいよ。僕に勝てたらね。」

「あなた方にはこれからちょっとしたゲームに参加していただきます。してもらうことは簡単です。各階にある階段を下りて1階すなわち(地上)にたどり着いてもらうだけです。拒否権は認めません。なお、階段は各階にいるモンスターを倒さないと出現しない仕組みになっています。どんな手を使ってもいいのでそのモンスターを倒してください。あ、そうそう、ここでは思わぬものが武器になります。それらをうまく使って攻略してくださいね。」


「あなたの目的は何ですか?」


僕は男に尋ねてみた。


「良い質問ですね〜。そうですね~、強いて言うなら変革とだけ言っておきましょう。」


「私は地上でお待ちしております。期待していますよ霧島遥希。以上、ご武運を。」


そう言うと男は消えてしまった。


なぜ、僕の名前を…



「うわぁぁぁぁー!!!!」


男の話を最後に周りは泣きじゃくる生徒、悲鳴をあげる生徒で埋め尽くされた。


とにかくこのままでは何も変わらない。

答えを出すには先に進むしかないんだ。


「行こう、雫、裕治!!」


「おもしれー!派手にやろうな遥希!」


「慎重に行こうね2人とも。」


こうして僕たちは変革への第1歩を踏み出した。


続く











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