0.3歩目
「光る存在」と「太陽」が必ずしも一致しないことは、知っている。
でも、そのふたつが一致する場合もあるってことも、知っている。
わたしのクラスには、まだ一年生の一学期だっていうにも係わらず、太陽であり光る存在がいる。
林野心。すらりとした手足に大きな瞳。ボブで綺麗に揃えられた髪の毛はいつもさらりと宙を舞う。
特別美人というわけでも、テレビの向こうから飛び出してきたアイドル並みの容姿というわけでもない。しかし、目を引くのだ。
彼女はいつも笑っている。教室の真ん中で、いつも楽しそうに笑っている。
彼女が笑えばそこに陽が灯り、あっという間に人々はそこに集う。
座席も、私とは違う意味での分相応。教室の真ん中だ。
妬ましい、憎い、そんな感情は持っていない。しかしどこか、胸にチクリと刺さる。
それが、わたしの中で彼女の存在だった。
閉まっている扉を目にしたことも、ノックに気づかれなかったことも。彼女はないだろう。いや、ないのだ。
何故なら彼女は、いつでも扉の向こう側に存在する人間で、わたしを受け入れなかった側の人間なのだから。
さらりとした髪の毛を靡かせて、今日もそこに人が集う。
教室は一気に陽だまりとなり、陰湿な場所はこの一角、教室窓側一番うしろ。わたしの席だけ。
陽だまりにあやかっているふりをして、興味のない素振りを見せる。
少し開けた窓から春の空気が舞い込んできて、また彼女の髪を翻した。
わたしはそれを横目で見ると、青と白が浮かぶ窓の外に視線を逸らした。
そしてひとつ、溜息を零した。
林野心。スカート丈は、膝上十五センチ。