表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空想

作者: ルスト

空想。それは現実にはありえないことである。


たとえば、別の世界などと言う存在を空想している人間がいるとする。その人の頭の中には、確かにその世界が存在するのかもしれない。思考の中にだが、彼の思考は確かにその世界を作り出しており、彼自身もそれを認識しているのだから。


しかし、その世界が現実に存在するかと言われると存在しないと言わざるを得ない。何故なら、その世界は彼の思考の中にのみ存在する世界で、現実世界の何処をどれだけ探しても彼が思い浮かべているような世界等存在しないのだから。空想とは、現実に存在しないことを思い浮かべているのだから。


もちろん、その世界が存在する可能性も世界の、いや、宇宙の果てまで調べつくせばもしかしたら存在するかもしれない。我々の手がどうやっても届かない宇宙の虚空の果てに、我々が空想の産物でしか思い描けないような世界が存在していることも否定することは出来ない。


しかし、それはあくまで「かもしれない」という程度の話であり、仮に数億年もの歳月をかけたとしても、宇宙の果てまで調べつくせるような技術が生まれたとしても、もしかしたら存在しないのかもしれない。当然である。私が今言ったのは「存在する可能性も0ではない」という話であるだけで、空想の世界が現実に存在することを確定させるような話ではない。


だが、個人の頭の中に存在する空想の世界を描き出すことは出来る。それが現実に無くても、その世界が文字通りありえない物であっても、それを文章や絵画、映像といった形で現実に作り出すことができる。その世界に我々が直接乗り込んで触れることはやはり出来ない。だが、その世界を見ることは可能である。仮に文章にされたのであればそれを読み、頭の中にその世界を描き出すことでその世界を間接的に見ることができるだろう。


もちろん、いくらそうやって描き出したり文章にしても現実に存在しているわけではないので世界の中に入り込んでその世界の物に触れることは出来ないし、その世界の住人と意思疎通を交わして触れ合うことなど不可能である。そのような空想を考える「妄想」に走るくらいならば現実に生きろと言われても仕方がない事もある。


しかし、良く考えてほしい。妄想に走るよりも現実に生きろと言うが、その現実をただ機械的に生きてもつまらなくはないだろうか。機械的に人の義務である「勉強」「仕事」をこなし、「食事」「睡眠」を繰り返す、ただそれだけの日々を未来永劫続けて果たして幸せだろうか、そうは思わない。何かの形で気分転換が欲しくなる。空想は、その中の一つにすぎないのだ。


それに、その空想は決して無意味な事ではない。その空想が無ければ、世界的に有名なあらゆる映画も、アニメも漫画もゲームも何もかも、存在しなかったのだ。もちろん、小説もその例外ではない。人の空想の世界に存在する世界観を上手い下手の差はあれどその人なりに描き出し、その世界を見ることができるようにしたものだからである。その世界を下敷きにし、そこに自分ならばこのような世界を描き出すという目的で作られる二次創作も当然この空想から生まれているのである。


空想や妄想を「変なこと」と断じたり空想が多い人を「妄想癖がある」と言う人もいるだろう。だが、その空想が無ければ世界は恐らく相当つまらない物になっているだろう。考えて見てほしい、ゲームも映画もアニメも漫画も小説も絵画もファッションも神話も童話も一切存在しない世界を。勉強か仕事という義務を果たして家に帰り、家では食事と睡眠のみを行うという生活を死ぬまで毎日繰り返す、機械的で単調な生活を。


空想の世界は、このような退屈から逃れるために生み出されるものでもあるのだ。それでもなお、空想の世界を考える人間を単なる「妄想癖」で片付けられるだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ