第四章 お年寄りの一週間 ― ゆったり流れる時間 ―
目が覚めると、足腰に少し重みを感じた。
歩くのもゆっくりで、息を整えながら椅子に腰を下ろす。
大変なことが増えたけれど、気づけばいつも、周りにはやさしい人たちがいた。
朝、長く付き合いのある近所の友人が声をかけてくれた。
「最近どうしてる?」
縁側に腰かけてお茶を飲みながら、昔話に花が咲く。
笑い声が、ゆっくりとした時間に溶けていった。
昼下がり、旦那さんと一緒に散歩に出かけた。
手をつなぐでもなく、ただ並んで歩きながら景色を眺める。
言葉はなくても、同じ空を見上げているだけで、心が満たされていった。
夕方、お孫さんが絵を持ってやって来た。
「これ、おばあちゃんを描いたんだよ」
あたたかな眼差しとともに差し出された絵を見て、胸がじんわりと熱くなる。
どの一日も短く、すぐに過ぎてしまう。
だからこそ、そのすべてが特別で、やさしさに満ちていた。
──こうして一日が過ぎ、二日が過ぎ、
気づけば六日間が静かに積み重なっていった。
七日目の昼。
旦那さんが「今日は花を見に行かないか?」と誘ってくれた。
一緒に花屋さんに行き、えらんだ花束。
選ぶ時間も、一緒に帰ってくる時間も、「いつもありがとう」の言葉も、全てがあたたかくてやさしい時間だった。
夜、不思議な本を開くと、ページが静かに薄れていった。
残されたのは、友人と笑いあった声、
旦那さんと一緒に見た景色や花束の鮮やかな色、
そしてお孫さんが絵を渡すときのあたたかなまなざし。
机の花瓶の横に、青い折り鶴がそっと置かれていた。
七日間の記憶は少しずつ消えていくはずなのに、
そのぬくもりは時を越えて、静かな夜の中で光り続けていた。




