第二章 学校の一週間 ― やさしい手と約束 ―
目を開けると、見知らぬ天井が目に入る。
体を起こすと、ベッドの端から小さな足がぶらりとはみ出していて、床に届かずにゆらゆら揺れた。
小さな手。小さな体。
私は、子どもの姿になっていた。
教室に入ると、友達が手を振ってくれた。
「今日も一緒に遊ぼうね!」
その声を聞いた瞬間、胸の奥がふわっと軽くなる。
休み時間、鬼ごっこで転んだとき、すぐに駆け寄ってきた子がいた。
「大丈夫? 一緒に保健室行こう」
差し伸べられた手を握ると、その温かさがじんわりと伝わってきた。
給食の時間には、隣の友達がパンを半分に割って差し出してくれた。
「これ、ちょっと大きかったから一緒に食べよう」
私は「ありがとう。私のもどうぞ」と言って手渡し、次の日も同じように半分こしようと約束した。
小さな約束が、心の中に小さな居場所を作っていく。
時にはケンカもした。
気まずいまま過ごす日もあった。
でも「ごめんね」と言うと、すっと「いいよ」と返ってきて、また一緒に笑い合える。
そんな繰り返しの中で、私は少しずつやさしさを覚えていった。
そうして六日間は、あっという間に過ぎていった。
──そして七日目の放課後。
校庭は夕焼けに染まり、オレンジ色の光が地面を包んでいた。
鬼ごっこの終わり際、友達のひとりが駆け寄ってきて、ポケットから小さな折り紙を取り出した。
青い鶴が、子どもの指先で小さく揺れる。
「ほら、これ。なくさないでね。明日も一緒に遊ぶ目印だから」
差し出された折り鶴を受け取ると、ひんやりとした紙の感触が手のひらに広がった。
ただの遊びのしるしなのに、胸の奥がじんわりと温かくなる。
そのときはまだ、これがどれほど大切なものになるのか分からなかった。
教室に戻ると、先生が黒板を消しながらふとこちらを向いた。
「また会えるといいね」
その言葉が、青い折り鶴の色と重なって心に深く刻まれる。
夜、不思議な本を開くと、ページが静かに薄れていった。
残されたのは、名前を呼ばれた声。
友達と交わした約束。
折り鶴の目印。
そして先生の言葉。
七日間の記憶は少しずつ消えていくはずなのに、
温かさだけは、胸の奥に静かに残り続けた。




