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第5章 社会人の一週間② 小さな光とともに
六日間はあっという間に過ぎていった。
同僚と声をかけ合いながら仕事を進め、先輩に何度も助けられ、上司に小さく褒められる。
その一つひとつが、働く日常にやさしい光を灯していた。
七日目の夜、仕事を終えてまた喫茶店に立ち寄った。
コーヒーのカップの横に、小さな青い折り鶴がそっと添えられていた。
驚いて顔を上げると、店員が穏やかに微笑んで言った。
「目印は、きっとあなたを導いてくれますよ」
その言葉が胸に沁みて、カップから立ちのぼる湯気まであたたかく感じられた。
夜、不思議な本を開くと、ページは静かに薄れていった。
残されたのは、同僚の支え、先輩の言葉、上司の短い褒め言葉、そして喫茶店で受け取った折り鶴の青。
記憶は薄れていくはずなのに、その温かさだけは消えずに胸に残った。