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プロローグ
まぶたを開けると、見知らぬ天井があった。
静かな光が差し込み、カーテンの布が揺れている。
ここがどこなのかも、私は誰なのかも分からなかった。
ふと顔を上げると、壁際に鏡があった。
そこに映る人を、私は知らなかった。
けれど、それが“自分”であるかどうかも、分からなかった。
息をするたびに、どこからか柔らかな香りが流れ込んでくる。
見知らぬ部屋の片隅に、小さな机があり、その上に一冊の本が置かれていた。
手に取ると、紙の手触りがやけに確かで、胸の奥がひとつ鳴った。
ページをめくると、誰かの日々がそこに記されている。
名前も顔も知らない人たちなのに、不思議とやさしさだけは鮮やかに伝わってくる。
その瞬間、胸のどこかで、これが私の旅の始まりだと知った。
——まだ理由も行き先も分からないまま、けれど何かに導かれて。




