プロローグ
ご覧いただきありがとうございます。
この物語は、七日ごとに知らない人生を歩む「私」が出会う、小さなやさしさの記憶を綴った短編集です。
まぶたを開けると、見知らぬ天井があった。
静かな光が差し込み、カーテンの布が揺れている。
ここがどこなのかも、私は誰なのかも分からなかった。
ふと顔を上げると、壁際に鏡があった。
そこに映る人を、私は知らなかった。
けれど、それが“自分”であるかどうかも、分からなかった。
息をするたびに、どこからか柔らかな香りが流れ込んでくる。
見知らぬ部屋の片隅に、小さな机があり、その上に一冊の本が置かれていた。
手に取ると、紙の手触りがやけに確かで、胸の奥がひとつ鳴った。
ページをめくると、誰かの日々がそこに記されている。
名前も顔も知らない人たちなのに、不思議とやさしさだけは鮮やかに伝わってくる。
その瞬間、胸のどこかで、これが私の旅の始まりだと知った。
——まだ理由も行き先も分からないまま、けれど何かに導かれて。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
プロローグでは、まだ謎めいた世界の入り口だけですが、次から始まる第一章では日常のあたたかさが描かれます。
もし気に入っていただけたら、続きも覗いていただけると嬉しいです。