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4 撃滅はNPCに任せる

「このまま攻撃を続けてください。無理に倒そうとしなくてももう少しすれば攻撃部隊がかってに倒してくれます!」

「はいぃ!」

「わ、分かりました!」


 うん。お互いにフォローし合うように動いているし、これなら十分耐えきれるだろう。

 とか思っていたら、固まっていた数体のポーンがまとめて消し飛んだ。


「……え?え?」

「な、なにが?」


 いきなりの急展開だもの。最初に説明があったとはいえ驚くわよね……。


「落ち着いて!今のが攻撃部隊からの狙撃です」

「あ、あれが」

「そういうことか」


 とはいえ、そこそこにゲーム慣れしていた人たちなのか、そんな雑な説明でも納得してくれた。


「それじゃあ私はこれで――」

「あ、待ってくれ」

「君、他のやつらも助けるつもりなんだろ?俺たちもついて行っていいかい?」

「人数が多ければ、声かけられた側も安心できるだろうし」

「え?でも足止めの時間稼ぎが中心になるから、リザルト報酬は期待できなくなりますよ?」


 攻略サイトによれば、基本報酬以外にポーンを倒した数に応じてボーナスが設定されていたはずだ。その一方でこのイベント戦闘では死に戻りがない上に時間経過で勝手に倒してくれるためか、他プレイヤーを救援しても得られる報酬は何もない。

 だからこの行為は私の自己満足でしかなかった。


「そっちは最初から狙っていないから大丈夫だ。それよりも大してプレイしないままくそレビューを流されるようなことになる方がヤバい」

「そうそう。辞めるだけならともかく、それでこのゲームがサ終にでもなったら困るし」


 む……、確かに思ったようにならなかった苛立ちを罵詈雑言という形で発散しようとする人は少なくはない。実際にそういった感想やレビューのせいで失速低迷して、サービス終了に追い込まれたというコンテンツも存在している。


「分かりました。では一緒に行きましょう」

「よろしく頼むよ」

「頑張るよ」


 きびだんごもないのにお供ができるとは思わなかったな。

 しかし、これでプレイヤー救援活動がやりやすくなったのも事実だった。横入トラブル回避のために声掛けをしている間に彼らが準備をしておき、許可が出たと同時に遠距離攻撃でポーンの群れの足を止める。更に私が【ショットガン】を撃ちながら突撃を敢行して【ソード】で切り付け一撃離脱。

 この頃になると逃げ惑っていたプレイヤーたちも例さを取り戻して区劇に参加するようになる。あとは遠距離からチクチク削って、攻撃部隊の狙撃を待つだけの簡単なお仕事となる。


 戦闘後になぜか救援したプレイヤーたちが仲間になるところまでセットでそんなことを数回繰り返せば、残る戦闘はフィールドの奥の方で戦っている上位陣だけとなっていた。


「あの人たちバトルガチ勢っぽかったし、後はお任せでいいですよね?」

「賛成」

「異議なし。下手に関わると文句言われそうだし」


 他の人たちも似たような意見がほとんどで、残りもリーダーである私の決定に従うといったものだった。

 ……リーダーになんてなった覚えはない、と言っても無駄なのだろうなあ。などと考えながら未だ激しい戦闘が続いている一角へと目を向ける。さすがは訓練時の成績上位者たちだ、危なげなく次々とポーンを屠っている。更に自分たちの方から突っ込んでいっただけあって戦意も高いままのようだ。

 これは「応援にきました!」と言っても「邪魔だ!」と一喝されて終わるやつね。


 そんな一方的な状況なのに、どうして未だに戦いが続いているのかと言うと、とにかく敵の数が多かったためだ。私たちが相手にした――倒したとは言っていない――数は五十体ほどだった。しかし、この線上に出現したポーンの数は二百体前後だった。あくまで私の目算ではあるけれど、それほど大きな差はないと思う。

 つまり、上位陣の彼らはわずか数名で全体の四分の三ほどの数を引き寄せていたことになる。


「なんか、トッププレイヤーの配信動画みたいな動きしている人がいるんだけど……」

「あ、例の台詞言った人も頑張ってるね」


 他のプレイヤーたちもすっかり観戦モードとなり、やいのやいのと騒いでいる。まあ、ここまで迫力のある戦闘を臨場感あふれる場所で見物できる機会なんて、そうはないだろうから仕方がないか。

 上位陣も好きでやっているのだろうから、文句を言ってくるようなこともないだろう。なにせ時間経過による敵の消滅が発生しないエリアに居るのだし。


「あの、さっきから攻撃部隊の狙撃が一度も起きていないんですけど?」


 おや?ネタバレを嫌うタイプなのか知らない人がいた。


「フィールドの奥の方は攻撃部隊の範囲外ってことになってて、自力で倒す必要だあるんだ」


 初回からバトルを堪能したい人向けの場所ということだ。ちなみに、その範囲に近付くと注意と警告が出るようになっている。

 HPが大きく減少した時点で回復してくれることに変わりはないので、ここでバトルの腕を磨く人もいるのだとか。他にも同じクエストやシナリオは受けない、ストーリーイベントの報酬だけで進めていく、といった縛りプレイをしている人などは、できる限りたくさんの報酬を得るために自力討伐エリアへと飛び込んで行くのだそうだ。


 ただ、中にはお世辞にも上手いとは言えない人が挑戦することもあるようで、終了までの時間が長くなって同じ組に振り分けられた他のプレイヤーと揉めたこともあるらしい。

 私としてはゲームの楽しみ方は人それぞれなのでご自由にどうぞ、と言いたいところだが他の人に迷惑を掛けるのは論外だと思っている。


「あの調子ならうちらはそれほど待たずに終わりそうだけどな」


 あるプレイヤーが苦笑交じりに言う。眼に見えて敵の数が減っていっているからね。その気持ちは分かるよ。

 特にあの少年アバターのプレイヤーが凄い。他の人だと倒すまでに数回の攻撃が必要になっていたのだが、彼だけは一回の攻撃だけでそのほとんどを撃破していたのだ。更に【ライフル】で貫通させて、数体まとめて倒すような離れ業まで披露していた。


「あいつは攻撃も確かに上手いんだけど、それ以上に位置取りが絶妙なんだろうな」

「どういうことなんだ、解説ニキ!?」

「解説ニキ言うな。……よく見ててみな。あいつは攻撃する時の動きに無理がないんだよ。それだけ安定した姿勢を保っているってことだ」


 言われて見れば確かに、少年アバターの彼は攻撃の時の姿勢がとてもきれいだった。


「無理のない体勢だから攻撃に集中できる。それが一撃で致命傷レベルのダメージを出すことに繋がっているんだろう」

「なるほど。よくわかったぜ解説ニキ!」

「ありがとう、解説ニキ!」

「だから、解説ニキじゃねえええ!!」


 その絶叫に反し、今後も彼は私たち仲間内から解説ニキと呼ばれることになるのだった。


執筆意欲増進のためにも、評価等もよろしくお願いします。

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