4-2. ケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「サトウ様。ミルフィーユをお気に召していただけましたかな」
「はは、こんなムキムキのオッサン連れてきて何かの冗談か?」
サトウの言葉に場が静まり返る。
ミルフィーユは俯き、肩を震わせている。
外見だけで人の性別を判断する。これは日本においても度々問題になるセンシティブな話題である。
身長約二〇〇センチのスキンヘッドの外見的特徴が男性である人物に対し、軽率に「ムキムキのオッサン」と言い放ったサトウに問題があると言えよう。
「あ、あんたまさかっ!性差別主義者か!?」
「え、は?何て?」
「出ていけ!‥‥あんたらみたいなイカれた連中に売る奴隷は、この店には居ない!」
「何か誤解してるって。俺はそのセクシス?とかって人間じゃない」
「犯罪者はみんなそう言うんだ。とにかく早く出ていってくれ!」
先ほどまで柔和な笑顔をみせていたアッサラームが捲し立てる。
その迫力に気圧されていたサトウに助け舟を出したのは、他でもないミルフィーユだった。
「御主人様は極東人なんだろう?」
「そうなんだよ。極東からこっちに来たばかりでさ」
その助け舟にすぐさま同調したサトウを、アッサラームが「黙れ!」と一喝する。
「極東から来たばかりとはいえ、今の性差別的発言は連邦法で死刑でもおかしくないんだぞ!それほどの発言だ!ミルフィーユ、お前はこの男を許せるのか!」
「そうだな、私はどうやったってケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘なんだ。それをムキムキのオッサンだなんて到底許せることではないよ」
そう言って目に涙を浮かべたミルフィーユは目頭を押さえた。
「それなら、この男を治安維持隊に突き出そう。いいね?」
「待ってくれ、アッサラームさん。あの言葉は確かに私の。いや、少女の心を傷つけた!だがしかし彼はもう、私の御主人様なんだ」
言えない。
まだ俺はアンタの御主人様ではないよ。だなんて言えない空気だ。
異世界転移とはサトウが想像した楽しいものではないらしい。
この世界に来て数時間。彼の中で疑念は確信に変わりつつあった。
性差別、ダメ絶対。
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