3-2. 主人公、初手で奴隷を買いがち
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
ギルドを出たサトウは、マップで見た奴隷商の館を目指して歩く。
折れた二本の指の痛みが少しずつ増していく。それと比例するように冷静になっていく。
「もしかしなくても革鎧の人に指の位置を戻してもらったほうが良かったのか?これ以上の痛みは耐えられる気がしないぞ」
ぼそぼそと独り言を言っている内に奴隷商の館に到着する。
館のある路地は多少薄暗い雰囲気だが、サトウが想像していたような不潔さは無かった。
どう入店しようかと悩むサトウに、脇でタバコをふかしていた男が声をかける。
「兄ちゃん、客かい?‥‥うおっ、えぇ、何その指は。こわっ」
「この通り怪我しちゃってね。治療院は高いらしいし、ここに治癒魔法使いの奴隷が居ないかと思って」
「治癒魔法使い?居ないこともないだろうが、どうかな。まぁ待ってな、アッサラーム!客だ!」
館の扉を開けると男は大声で叫んだ。男に背中を押されたサトウもそのまま館の中に入る。
奥から泥棒髭の男が出てくる。
「お待たせしました。お初にお目にかかります。アッサラームと申します」
「どうも。俺はサトウ。思ってたより清潔な店だな」
「はて、他国の方ですか。本国の奴隷売買は少々特殊かもしれませんな。奴隷と言ってもここに居るのは、働き口や財産が無くなったため当館を訪れ、自ら売りに出している者たちです。奴隷商といいますが人材斡旋や仲介のようなものと思っていただければ」
「結構ホワイトな感じか。いきなり本題なんだけど、治癒魔法使いを探してるんだ」
「おやおや、これは、なかなか酷い怪我ですなぁ。ご予算の方は?」
「二〇万ゴールドではどうかな」
「二〇万ゴールドでは流石に‥‥。正規の治癒魔法使いではちと厳しいですな」
「正規じゃなければいけるのか」
「しかし、これがまた彼女は曰く付きで、正直お勧めはできませんが」
彼女。曰く付き。
勝ったな。覚醒するタイプの美少女奴隷だろう。アッサラームの話を聞いたサトウはそう思った。
「いいさ。紹介してくれ、その子の名前は?」
「ミルフィーユと申します」
ミルフィーユね。やれやれ。
絶対可愛いよ、これ。可愛くなきゃ許されない名前してるもん。
次回、1人目のムキムキのオッサンが出ます。
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