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25-1. かなりボンボヤージュでした

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

 領主邸内。執務室の扉が開く。

 そこに現れたのは何とも頼りなさそうな少年だった。


 礼服の着方もなっていない。

 ネクタイは曲がっているし、ベルトを緩めているのかスラックスもずり落ちている。

 そんなダルンダルンの格好をした黒髪の少年は、領主を見てニヤニヤしながら「へ、へへ」と気まずそうに笑っていた。


 これが本当に一般人を殺害した要注意人物なのか?

 無害そうなやつほどヤバいって言うもんなぁと領主が考えていると、横で控えていた部下が咳払いをする。そうだ何か言わなくては。


「『筋肉(マッスル)()監獄(ジェイル)』よ。先の作戦では些かやりすぎてしまったようだな。しかし会えて嬉しく思うぞ」


「あぁ、へへ、どうも。そちらも良いウサ耳をお持ちで。Muscle bless you」

「挨拶ではなく。『筋肉(マッスル)()監獄(ジェイル)』と呼ばれたんだ」

「何それ。今、かなり頑張って絞り出したぜ。Muscle bless youって」


「『筋肉(マッスル)()監獄(ジェイル)』は私たちのパーティー名じゃないか」


「聞いてないよそんなの。いつパーティー名なんか決めたよ」

「パーティー登録をした日に候補として出したじゃないか」

「そうだっけ?‥‥でもパーティー名って保留にしてなかったっけ」


「それは。御主人様が日本人に拐われたときにだね。捜索対象者の所属パーティー名が無いと捜索しづらいと言われたから、私が申請しておいたんだ」

「すげぇ勝手なことするじゃん」


 領主の前にも関わらず危険人物二人組は揉め始める。

 サトウが手を前後に前後に振りながら「えー、何かさぁ。もっと格好いいパーティー名が良かったなぁ」とゴネたところで、領主が咳払いをした。


「そろそろ呼び出した理由について話してもいいだろうか。‥‥冒険者サトウ。保留になっている君の処分について、これから伝える」


「保留?いや、スライム五匹討伐すれば恩赦で無罪放免なんじゃ」

「一旦保留とする。としかまだ(・・)伝えていなかったはずだ」


「やれやれ、いや、スライム五匹って結構大変でしたけどね。ワンピースで言えば空島編くらいの激闘でしたよ。かなりボンボヤージュでした」


「ちなみに私は、処分は保留だと伝えたはずだよ。だが御主人様の脳みそがまろび出ていたときだったかもしれない」

「脳みそがまろび出てるときに大事な話はするなよ」


 また脱線しだした二人の会話を、領主の後ろに控えていた部下が手を鳴らして静止する。

 サトウが反射的に「あ、すんません」と謝ると、領主が結論を告げる。


「もう少し調査は必要になるが、私はこのまま無罪放免で構わないと思っている」


 サトウのステータス値や、詰所での取り調べの内容を見る限り、彼に日本人や元冒険者の殺害は難しい。というのが領主の判断だった。

 無罪放免という言葉で調子に乗ったサトウが軽口を叩く。


「領主様が話のできる人でよかった。てか取り調べ、あれ、酷いですよ。ただのリンチでしたからね。取り調べの可視化ってやつをしたほうがいい」


「しかし君のことを完全に信じてやることもできない」

「へ」


「実は、君が日本人ではないかという報告は前々から上がっていてね」

 ペルソナ5で政治家や警察組織等について学びました。

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