24-3. 男はやっぱり膨張率だよね
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
異世界人VS日本人の戦闘、そして眼前で起きた日本人の死。
湯船で一息ついたせいか悪い想像ばかりサトウの頭をよぎっていく。
次に死ぬのは自分なのではないか。
異世界人と戦うことになるかもしれない。日本人として殺されるかもしれない。殺されなくとも酷い拷問に遭うかもしれない。
考え出すとキリがなかった。
「御主人様。そろそろ良いだろうか?」
脱衣所からミルフィーユの声。どうやら長く湯船に浸かっていたようだ。
サトウが湯船から上がり脱衣所へ向かうと、ミルフィーユが仁王立ちで待っていた。
「そういえば私たちは裸の付き合いというのをまだしたことが無かったね」
「ん?そうだな。する必要がないしな」
「御主人様のモノはなかなか可愛らしいサイズをしているじゃないか」
「やれやれ。こういうのは元のサイズじゃなくて膨張率だって。向かいに住んでるイケヤマさんも言ってんだから」
イケヤマ。
日本に居たころ。向かいの家に住んでいた謎の中年男性だ。
サトウのアメリカ人美女の義母をいつも目で追っている。白いタンクトップに青いトランクスという出で立ちで近所を徘徊しているのに通報されない。そんな不思議な中年男性。
そんなイケヤマとの唯一の会話「男はやっぱり膨張率だよね。元が大きいからと言って相手を満足させられるほど膨張するとも限らないしね。‥‥あ、全く関係ない話なんだけど、君のお義母さんって何時ごろなら一人で家に居るのかな。いや、本当に変な意味じゃなくて」を思い出した。
変な人だったが、サトウにとっては良い日本の思い出である。
「あれ、服が」
サトウが装備一式を入れていたはずの籠には真新しい礼服があった。
「流石にボロボロの服で領主様に会う訳にはいかないからね。邸側で用意してくれたそうだ」
「でもミルフィーユちゃんはいつも通り上裸じゃん」
「私のこのスラックスを見てくれ。アルマアーッニだぞ」
「何それ、どこのブランド?そもそもケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘を自称する人間が、上裸のままでいいのかって疑問はあるけど」
礼服に身を包んだサトウは「嫉妬というやつか」と呟くミルフィーユを無視して脱衣所を出る。
あいも変わらず不機嫌そうな猫耳メイドの後をついて行くと、彼女は大きな扉の前で立ち止まった。
扉の両脇には甲冑姿の兵士の姿もある。何だか怖い。
ノックの後、内側からの返事を持ち扉が開くと、そこには領主らしき男の姿があった。
あなたの隣にも不思議な中年男性はいるんですよ。
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