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22-2. 誰じゃサトウをこんな目に合わせたのは

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

 今、サトウの視界には蛍光緑色(ネオングリーン)の光線がいくつも飛び交っている。


「ナニコレ、ずっと飛んでるやつ。これWi-Fi飛んでる?」

「わい?‥‥脳みそをいじったことで本来は視えないはずの魔素や魔力が視えているのかもしれないな。そのうち治まるだろうが、安静にしておいたほうがいい」


「君なんだよね。脳みそをいじったのは」

「仕方がないだろう。脳みそがまろび出てしまっていたんだから」

「だから、まろび出るって何?どんな状況?」


 サトウとミルフィーユ、二人は鉄格子付きの馬車に揺られ、ある場所を目指していた。

 いつも討伐依頼をこなしている初心者の森の外周を行った先にある、脱初心者向けの狩り場だ。


「領主様のおかげで助かったよ。恩赦ってやつ?」

「だが一〇日以内にスライムを単独で五匹討伐できなければ、改めて罪に問われることになる。気を引き締めていこう」


「はぁ、やれやれ。脱初心者向けの狩り場の魔物ね。スライムってゴブリンより少し強いくらい?」

「同等か、人によっては簡単かな。今日はスライムを観察することに集中してくれ」


「降りろ。このまま逃げようだなんて考えるんじゃないぞ」


 御者をしていた治安維持隊の隊士が馬車を停めた。

 二人の足首の枷。これには馬車から一定の距離を離れると起動する爆弾が組み込まれている。変なところだけハイテクなのだ。


「安心したまえ、今日はすぐに戻って来る。そうだ。待っている間、これを読んでおくといい。我がトップオブトップ教の経典だ」

「ミルフィーユちゃん。これ以上、罪状が増えるのはヤバいって。しばらくは大人しくしておいて」


 脱初心者向けの狩り場とは、山の入口付近を指すらしい。

 山中を少し進んだところにある沢がスライムの生息地とのことだ。


 山道を進み、沢に出ると「グエッ、グエッ」と聞き慣れた鳴き声がする。

 ゴブリンだ。


「そりゃゴブリンも出るか。ミルフィーユちゃん、別の場所に行こう」

「いや、ここがいい」

「?」

「スライムとはゴブリンと共生関係にある魔物だからな」


「じゃあスライム討伐ってことは」

「必然的にゴブリンを討伐する必要も出てくるだろうな」


 サトウにはゴブリンを単独討伐した経験がまだ無い。

 ゴブリンと同難度のスライムなら、タイマンで勝てるかもと考えていたサトウの計算は、早速破綻したのであった。

 まろび出た脳みそを戻したんだから、そりゃ飛んでるWi-Fiくらい見えるようになる。

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