22-1. 誰じゃサトウをこんな目に合わせたのは
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
白い部屋。老人が顎髭を撫でながら複数のモニターを眺めている。
数多の別世界の映像の中に、サトウが死亡して数カ月後の、現在の地球の様子が映し出されていた。
「ふいー、大変だったのう」
ステータスオールSのサトウを弱体化して異世界へ送り、神界の危機を回避した老人は、その後の残務処理を今終えたところだった。
地球では死亡したことになっているサトウ。彼と関わりのあった人物の精神的ショックを和らげるため、各人に新しい趣味や恋人を宛てがったのだが、これがまた大変だった。
地球上の因果律を操作した場合、思いもよらぬ影響が出ることがある。
老人が地球環境に影響が少ない絶妙なバランスを見つけ出すまでに、シミュレーション上では人類滅亡レベルの世界大戦が六三回起こり、六百万種類の動植物が絶滅し、四五ヶ国が消滅した。
そんな中でやっと最良のバランスを見つけ出せたのだ。
「日本が発展途上国に逆戻りした上、主要企業が全て外国に買収されたが何とかなるじゃろ。後は政治家の仕事じゃし!わしゃもう知らん!」
ムー大陸の存在まで無かったことになってしまったが、老人的にはワイキキビーチが好きだったので、そのままにしておいた。
老人はモニター前のデスク上の資料を片付ける。
資料といってもNTR・BSSものの同人誌だ。サトウのハーレム女子たちに新しい恋人を宛てがう際、シチュエーションが思いつかなかったので参考にしていた。
「流石、ヘンタイの国じゃなぁ。BSSのう。僕が先に好きだったのにって、告白する勇気が無くてモジモジしとったら先を越されて失恋しただけの話じゃろ?そんなことまで癖にするとは恐れ入るわ」
ドラゴンカーセックスとか、もっとメジャーな性癖を広めればいいのに。
日本人は日夜エロ画像をネット検索し、異世界転生や転移を妄想し、思い出したようにSNSで政治批判を繰り返す。怠惰と責任転嫁の塊のような存在。
つまり神々のお気に入り。愚かで甘ったれた玩具なのだ。
「ここまでサトウが居なくても回る世界にしてしまうと、少し可愛そうな気もするのう」
アメリカ人美女の義母は、夜はサトウの父と、昼は向かいのイケヤマさんと仲良くしている。
大学一年生、高校二年生、中学三年生の美人三姉妹は、姉の大学の先輩の家で入れ替わり立ち替わり仲良くしている。
金髪巨乳ギャルは、イジメられているところを助けたショタに告白されそのまま仲良くしている。
美人揃いの生徒会メンバーは、生徒会内で仲良くしている。あら^~。
バイトリーダーをしていたバイト先も、サトウ不在でも問題なく営業できている。そもそも彼が死亡したことすら伝わっておらず無断欠勤ということで先日クビになっていた。
「いかん、悲しくなってきた。誰じゃサトウをこんな目に合わせたのは。わしじゃ」
老人は目頭を押さえながら、現在のサトウの様子をモニターに映す。
奴隷商の館のバックヤードにて、サトウが屈強な男にタックルされた瞬間だった。愉快愉快。
ふと別モニターに映る数字が気になった。サトウのステータス値だ。
ステータスのほとんどが最低のG評価で、HPとVITがのみF評価。六歳児の平均値とされる低ステータスにも関わらず、この評価は老人を唖然とさせた。
「ステータスが、上がっとる‥‥」
転移前にサトウにはリップサービスで「全ステータスがGかFまで下がる」と濁して伝えていたが、実際はステータスオールG。ついでにステータスはGから上がらないようにしたはずだった。
もしサトウが地球にいたころの強さを取り戻してしまうと少々マズいことになる。
彼のステータスオールSの遺伝子を受け継いだ子孫と、地球の科学力が交わった場合、この神界に対し大きな影響が予測されていた。
異世界であれば科学力など手に入れることは無いだろうが、それでもステータスオールSの遺伝子そのものを絶っておくに越したことはない。
老人は異世界の担当者ではないため、問題が起きても責任を取らなくていい。だが自分の世界から送った人間が問題を起こした場合、事態の収拾に協力する必要があるだろう。できれば阻止したい。
モニターに視線を戻すと、サトウは脳みそを治癒魔法でシャッフルされ、顔面の穴という穴から七色の火花を飛ばしている最中だった。何だか楽しそうだ。
「サトウめ‥‥。楽しそうにしおって。許さん、許さんぞ」
だが地球の神が、異世界の物事に直接関与することはできない。
せいぜい関係各所にサトウを要注意人物として再度周知するくらいか。
老人は額に青筋を立て、歯をむき出しにしてモニターを睨むことしかできなかった。
新しく漫画を買い始めました。
漫画を買ったことに後悔はないですが、思ってた以上に2,30巻とか
続いたりするので週刊連載だと特に心配。本棚の空きが足りるか。
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