21-3. こんな形で再会することになるとは
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「サトウ様、こんな形で再会することになるとは」
「えへへ」
布を鼻に詰めたサトウが照れながら頭をかく。
この泥棒髭の男はアッサラーム。奴隷商人だ。
取り調べ後、サトウは地下牢ではなく奴隷商の館へ移送されていた。
異世界転移初日にミルフィーユを買ったあの館だが、今回は客ではないせいかバックヤードに通されたようだ。
「それにしてもサトウ様が殺人ですか」
「冤罪なんだって。誰も信じてくれなくて」
「手前としても性差別主義者であるサトウ様のことを信じることはできませんな」
「別に差別もしてないってば。ミルフィーユちゃんとはずっと仲良くしてるのに」
アッサラームは訝しげにサトウを見たまま書類を差し出した。
奴隷契約書のようだ。
「取り調べに非協力的なサトウ様には、治安維持隊からの依頼でこれより奴隷になっていただきます」
「怖い話してる?」
「その後、私の隷属魔法で殺人事件の真実を語っていただきます」
「怖い話してるじゃん。ずっと真実しか語ってないのに」
どこに居たのか屈強な男たちが現れた。
そのままサトウは素早いタックルで抑え込まれる。
「イダダ、無罪だったときは奴隷から開放してくれるの?説明責任とかないの?」
あれよあれよと右親指の腹をナイフで傷つけ、奴隷契約書に押し付けようとする。
きっと押し付けられたら終わりだろう。
今までの取り調べから、この国の司法が日本ほど整っていないことも予想できた。
「待ってくれ!アッサラームさん!」
地面が揺れるようなバリトンボイス。
ケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘を自称する犯罪奴隷の男。
サトウパーティーの最強戦士。ミルフィーユだ。
「間に合ってよかった。御主人様への処分は保留だ」
ミルフィーユから新たな書類を受け取ったアッサラームが驚嘆した。
「これは?領主様からですか」
「割り込んでしまってすまないね。アッサラームさん」
「ミルフィーユ‥‥。構わんさ。幸せにやってるのか」
「あぁ。御主人様はとても良くしてくれている。いつか、アッサラームさんと御主人様が仲良くできるよう私は祈っているよ」
何かいい話にしようとしている空気の中、サトウが口を挟む。
奴隷の話が無くなったのだ。ミルフィーユにお願いしたいことが彼にはあった。
「ねぇ今日、取り調べでボコボコされてから鼻血が止まんないんだ」
「どれ。これはいけない。脳みそがまろび出てしまっているじゃないか」
ミルフィーユはサトウの頭に触れ、治癒魔法をかけ始めた。
「まろび出るって何?初めて聞く言b‥‥ばっ、ぎっ、ガガガガガ!?」
サトウの顔面の穴という穴から、七色の火花が飛ぶ。
その光景を見て、アッサラームは「綺麗だ」と涙を流した。
ついに主人公の脳みそがまろび出てしまいました。
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