21-2. こんな形で再会することになるとは
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
拷問まがいの取り調べはまだ続く。
「そろそろ正直になったらどうだ。これ以上はお前のためにならんぞ」
「だからさ、太った日本人に話をもう一度聞いてって言ってんじゃん」
「あいつは昨日の晩、王都に移送されて行ったよ」
「ずっとアイツからも話を聞けって言ってたのに何で移送しちゃうかね。これだから国家の犬は!誰の税金から給料が出てると思ってんだ、この税金泥棒!」
「また侮辱罪が追加になったな」
調書を取っていた隊士が手元のバインダーに、ペンで棒線を一本追加した。
取り調べ中、サトウが隊士の意にそぐわない受け答えをする度、棒線が足されていく。
「仮にさ。本当に俺が殺したんだとしても、相手は指名手配中の日本人だろ?正当防衛だろって言ってんじゃん」
焦りながら反論したサトウの鼻から、また鼻血が垂れる。
隊士が調書に追記しながら「言質と」と呟いた。
「やっぱりお前が殺したんじゃねーか」
「仮にって言ったじゃん。そもそも俺のステータスは確認済みなんだろう?あのステータスで日本人二人も殺せるわけないじゃん」
六歳児の平均値と同じステータスだと鑑定されたサトウに殺人は難しい。
いや、本来の年齢通りのステータスだとしても彼に殺人は難しいだろう。
異世界に来て相当テンションが上がってたとしても、いくらZ世代だって殺人は難しい。
ニュースで騒がれてるZ世代の若者ってアレかなりヤバい部類だからね。あんなのと一緒にしないでほしいよ。
「お前がクソ雑魚の無能ってことはステータスから分かってるが、一般人が一人死んでるわけだからな」
「一般人は知らんぞ。あそこに居たのは日本人二人だったろ」
「いや、日本人一人と一般人一人だ。まぁその一般人も元冒険者。なぁ、お前マジでどんな手を使って殺したんだ?」
サトウは一週間前に死ぬ直前のリカケイが言っていたことを思い出す。
怪我で引退した冒険者の認識票を買っておいた、と。
しかも、リカケイはユウヤによって顔面メッタ刺しなっていた。治安維持隊側が彼が持っていた認識票を見て判別したのも納得だ。
その後もサトウと隊士は「殺った殺ってない」と押し問答を繰り返し、取り調べはぐだぐだになっていく。
たまにその状況に苛立った隊士がサトウを殴り飛ばす。この一週間毎日こんな感じだ。そのうち脳が萎縮して死ぬかもしれない。
「時間だ」
やっと本日の取り調べが終わる。
またあの悪臭漂う地下牢に戻るのかと、サトウは鼻血を袖で拭った。
今年の初夢は「角野卓造に、足の指の爪を剥がされる」夢でした。
調べなくても分かる。凶夢です。七月に日本終わるらしいし、それかな。
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