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20-3. 仲良くしようよ。同じ日本人なんだから

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

「畜生、畜生!無能がぁ!よくも俺を‥‥、あぁ!痛ぇよぉ!」


 上半身だけになったユウヤが、リカケイの首や顔に何度もナイフを突き立てる。

 顔中の穴から血を流し、腹からも臓物と血を垂れ流しながら暴れるヤンキー。彼はテケテケにでもなったのだろうか。


 ヤンキーの根性。

 周りからどれだけダサいと言われても、絶対に息子の襟足を伸ばすし、兄弟が生まれれば名前は大亜(ダイア)紋土(モンド)にする。中年になっても「俺は昔はワルでさ」と吹聴してやる。そんなある種まっすぐな根性が、ユウヤの復讐の原動力になっていた。


「俺は、東京MAN-ZOC(マンゾク)で、関東統一、して、いつか、ジョーカー、に‥‥」

「もう止めときなよ」


 ユウヤが振り上げた手から、サトウがナイフを取り上げる。彼は今度こそ動かなくなった。


 サトウが室内を見渡す。二人分の死体と血飛沫の跡。そしてなぜか生き残った自分。

 安心したのだろうか今頃になって体が震え始め、歯がガチガチと鳴った。


「仲良くしようよ。同じ日本人なんだから」


挿絵(By みてみん)


 センチな気分になったサトウがつぶやくと同時に扉が蹴破られ、治安維持隊が駆け込んでくる。

 彼が事情を説明するより先に、隊士が彼を羽交い締めにして拘束した。


「御用だ御用だ!この殺人鬼め!」

「待って!俺は誰も殺ってない!この二人が勝手に殺し合ったんだ!」


 芽生えかけていたリカケイへの友情や、センチな気分は吹き飛び、サトウは全力で保身に走る。


「殺し合ったって、お前。その手のナイフは何だ!」

「これはぁ!体が真っ二つになってる方が、眼鏡の方を刺して、俺が取り上げたの!」

「眼鏡の方を刺したって、そりゃ体が真っ二つになる前か?後か?」

「あとあと!」


「嘘つけぇ!体が真っ二つになった奴が動き出して、人相が分からなくなるくらい人をメッタ刺しにできるか!嘘下手かお前!」


 体が真っ二つになった死体。

 人相が分からなくなるほどメッタ刺しになった死体。

 凶器とみられるナイフを持った男。


 これらが揃った現場だ。誰が真っ先に犯人だと疑われるかは明らかだろう。


「ここから逃げた日本人がいたはずだ!そいつから話を聞いてくれ!」

「話ならもう聞いたよ。黒髪黒目の、無能呼ばわりされてる、冴えない男が、人を殺したってな」


「よかった、ちゃんと話聞いてるんじゃん」

「だからお前だろ。黒髪黒目の、無能呼ばわりされてる、冴えない男」


「誰が無能な冴えない男だ!上等だ!辺り一面、血の海にしてやるよぉ!」

 先日、久しぶりにナメクジを見ました。

 意味もなく塩を振りかけたくなりますよね。やりませんけど。

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