19-2. あれ死んだんじゃないの
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
透明化スキルや強制睡眠スキルを駆使し、かき集めた至高の盗撮コレクション。
そのコレクションを、行く先々の町のゴロツキ相手に五分間五千ゴールドでスマートフォンごと貸し出し彼らは日銭を稼いでいたのだ。
「スマホごと貸し出すって、盗られたりしそうで怖くない?」
「だ、だから、ぼ、僕の特技が必要だったんです。ひ、酷いじゃないですかぁ。な、殴るなんて。お、置き去りにするつもりだったんですかぁ?」
気づけばリカケイが眼鏡を上下にカチャカチャしていた。
虚ろな目をして、置き去りにしようとして扉に手をかけたユウヤを見つめている。
そんなリカケイの様子を見た二人は、どこか怯えているようだ。
「落ち着けよ。さっきは悪かったな。ちょっと医者を拐ってこようと思ってたんだ、お前のために」
「う、嘘だ!そ、そんなつもり無かったくせに!‥‥は、鼻血だ。し、死んじゃうのかな。マ、ママーッ!」
「リカケイ君、落ち着くんだな」
「お、おちん、落ち着け?な、なら抱きしめて!ぼ、僕を抱きしめてください!」
興奮したリカケイが二人に近寄ろうとしたとき、ユウヤが叫んだ。
「近寄るなぁ!こっちに来るんじゃねぇ!」
「ど、どうして!あ、あんなにあんなに!ぼ、僕にだけ手を汚させておいて!つ、都合が悪くなったら切り捨てるのか!」
「リカケイ君、深呼吸なんだな」
「そうか分かった!まずは、こっちの無能を殺せ!人一人殺せば、スカッとして落ち着くよな?な?」
そう言ってユウヤがサトウを指さした。
え、俺、完全に蚊帳の外じゃなかった?と言う間もなく、ユウヤがサトウを殴り飛ばす。
丁度リカケイの足元にサトウが転がる形になった。
「いでぇ!ユウヤ、お前!そんな人のことガンガン殴り飛ばして良いと思ってんのか!リカケイさぁん!まじヤッちゃいましょうよアイツ!」
「ほ、本当に。ひ、人一人殺せば、ス、スカッとして落ち着けますかね」
「「もちろん!」」
ユウヤとサトウが同時に発言する。
どっち?リカケイはどっちの味方になるの?
寝転がりながらそう考えているサトウを、リカケイが敬々しく助け起こした。
「やれやれ、リカケイさんは俺の味方だってよぉ!特技が何なのか知らないけど、何?殺人拳法の使い手だったりするの?」
はしゃぐサトウを見て、ユウヤがほくそ笑む。
「お前、終わったぜ。リカケイ、スキルの説明をしてやれよ」
「せ、説明。は、はい。ぼ、僕のスキルは『点P』。み、右手で最後に触れた箇所に向けて、じ、時速二キロで対象を置い続ける不可視の点Pを一つだけ出せます」
「何だそのスキル、‥‥ってスキル持ちじゃん!どこが無能だよ、この嘘つき!」
しかし時速二キロで対象を置い続ける不可視の点Pを一つだけ出せて何になるのか。
無能と言えるのかもしれない。
「た、旅の道中に覚醒したんです。こ、このパーティー唯一の攻撃スキルだったので極秘扱いになってました。こ、この点Pに追いつかれた箇所は内側から抉れるように爆発します」
「ちょっと、さっき俺を起こしたとき、どこを触った?俺のどこに触った?」
「さぁ、その無能を殺せ!ここからまたやり直そう!リカケイ!」
「ユ、ユウヤ君。も、もうスキルは発動しました」
「嫌だぁああああ!やーやー!やーやーなのぉ!」
静寂。
しばらく待ったがサトウは爆発していない。
何だか叫んだことも恥ずかしくなってきた。
「時速二キロって、どれくらいの速さ?」
「知ってどうする。どうせお前もう死ぬんだぜ」
時間が経つにつれ死の恐怖より、叫んだことへの恥が勝っていく。
スキル発動後、リカケイは静かに涙を流していた。
いきなりユウヤの脇腹が爆発し上半身と下半身に分かれる。
ドチャ、っと湿った音ともに崩れ落ちた彼は、そのまま動かなくなった。
膝をつくような形で残った下半身からは噴水のように血が出続けている。
「ユ、ユウヤ君。ぼ、僕を殴りましたよね。い、一発は一発ですから。こ、これで仲直りです」
私の中の「濡れたプードルみたいな髪型」のイメージは、
イケメンならキタニタツヤ。イケメンじゃないならパントゥーチです。
いや、パントゥーチも良い顔してるけど。何だったらこっちのが好み。
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