19-1. あれ死んだんじゃないの
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「ここから隣国へって。そんなに酷い目に遭ったんですか?」
「俺たち三人が転移したのは、よりによって王都でな。日本人にとっては地獄みたいな場所だったぜ」
「そういえば、こっちで日本人が見つかった場合でも王都に移送されるって話でしたね」
王都の惨状を思い出したのかユウヤは天井を見上げて頷く。
隣で聞いていたリカケイやマンプクも口々に「あれは酷かった」と同意した。
曲がったことが大嫌いだと言っていたユウヤ。
きっと彼は、迫害される日本人たちを前に憤慨し、大暴れした後に王都を脱出したのだろう。
「王都では日本人だとはバレなかったんだがなぁ。王都を出てからの道中、日銭稼ぎでドジっちまった」
「ドジった?王都で日本人のために闘ったとかではなく?」
その疑問に、ユウヤがフッと笑い「そんなこともあったかもな」と呟く。
ここまで旅を続けてきた彼らに、どんな物語があったのか。サトウは彼らの次の言葉を待った。
「今日みたいに女湯で盗撮してたのがバレて、普通に指名手配された」
「民家の住人を眠らせて、服を脱がせて盗撮したのもバレてたんだな」
「ぼ、僕は初めてのお酒で酔って、に、日本人だと公言してしまって」
「しょーもねえ!バレるべくしてバレてら!」
サトウが言うが早いか、ユウヤがリカケイを殴り飛ばす。
突然の暴力に場が静まり返った。
「うおっ、どんな八つ当たり?」
「八つ当たりなんかじゃねぇ。こいつが酒の勢いで日本人だなんて言ったせいで騒ぎが大きくなったんだ。‥‥思い出したら腹が立ってきたぜ!」
倒れてピクリとも動かないリカケイに、マンプクが駆け寄る。
ユウヤはスマートフォンの画面を操作し録画を停止すると特攻服の内ポケットに仕舞った。
「大丈夫かな、あれ死んだんじゃないの」
「この国ともすぐにオサラバだ。こいつはスマホだけ残して消えてくれて構わねぇよ。こそこそ隠れなくてよくなれば、こいつのスキルも必要なくなるしな」
「スキル?さっきリカケイは無能だとか言ってなかったっけ」
「あ?いや、ほら、盗撮が上手いとか特技の話だよ」
マンプクの様子を見るにリカケイは気絶しているようだ。
その様子を見ていたユウヤは短く舌打ちすると、サトウの足の拘束を解いた。後ろ手に縛られたままだが立ち上がれるようになる。
「あ、どうも。そうだ。日銭稼ぎってスマホの盗撮画像を何かしてるってこと?」
リカケイの介抱をしていたマンプクを軽く蹴り、部屋の外へ出ようとするユウヤ。サトウはそんな彼を引き止める。
ここがどこなのか、拐われてからどれだけ経っているかは分からないが、きっとミルフィーユや、そのうち作戦に参加していた冒険者が駆けつけてくれるはずだ。
何とか時間を稼ぎたい。できれば、この場でユウヤたちを捕らえたい。
依頼の成功報酬が欲しい。せめてミルフィーユたちと宿の部屋を別にできるくらい稼ぎたい。
「まあな。盗撮画像で商売してなかったら、ただ盗撮だけしてるヤバい奴らになるだろ」
盗撮画像で商売してる時点でヤバい奴らだろうが。
作業BGMにブルアカのアニメを見てます。
相手の女の子のゴーグルを鉄砲で撃つのは普通に危ないなと思いました。
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