17-2. あんたらグルだったのか!
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
幸せな夢を見た。
一ヶ月ぶりにハンバーガーを満腹になるまで食べる夢だ。
いや、ハンバーガーなんて高級料理、ここ数年食べられていない。
チキンクリスプ一八〇円って何?昔、一〇〇円じゃなかったっけ?
そんなもん誰も買うわけないだろ。マジでどっかおかしいんじゃねーの。
「起きろ」
頬を叩かれた痛みでサトウが目覚める。
薄暗い室内。どうやら拉致されようだ。
周りにミルフィーユやインラーンの姿は無い。
目覚めたサトウは木製の椅子に縛り付けられていた。抜け出すのは難しそうだ。
そんな彼の目の前には、白い特攻服のヤンキーが仁王立ちしていた。
「うわっ、ヤンキー!ここまでテンプレの奴。なかなか見ないぞ」
「俺を見てヤンキー、か。お前、日本人だよな?」
「ニ、ホン?ニホンジン、ナニ?コトバ、ワカラナイ」
「なんだ日本人じゃねぇのか」
所詮、日本のヤンキー。異世界人ほど手強くはないだろう。
日本に居たころはヤンキーの友人もいたし、何故かサトウの舎弟を自称する後輩もいたりした。
扱いには慣れている。やれるだけやろう。まず相手の情報を上手く引き出したい。
「ユ、ユウヤ君。か、彼は日本人で間違いありません。さ、さっきLGBTQの話題に反応できていました」
濡れたプードルみたいな髪型をした眼鏡の男が、眼鏡を上下にカチャカチャしながら言う。黙ってろや。余計なこと言いやがって。
「番頭さん!あんたらグルだったのか!‥‥てか、LG?リーフグリーン?何の話?本当に日本人じゃないんだってば」
「LGBTQってのは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニングの頭文字で、性的マイノリティの総称だぁ。お前も日本人なら覚えとけ」
「何でヤンキーのクセに、マイノリティについて詳しいんだよ。あんたらヤンキーは、もっと前時代的なノリで生きてる人種だろうが。大親友の彼女の連れの美味しいパスタが作れる家庭的な女がタイプなんだろうが」
「やっぱり日本人だ!その歌は日本人しか知らねぇだろ!」
「はぁ?極東人なんですけど!日本人って行ったほうが日本人なんですけど!」
「俺は元から日本人つって指名手配されてんだ!‥‥お前、マジ調子のんな?」
「はい、出ました。ヤンキーって自分の都合が悪くなるとすぐ『調子のんなよ』って言うよな。別に乗ってないから。最初から最後までそっちが調子に乗り続けて、勝手に都合が悪くなってるだけだから」
捲し立てたサトウは「直したほうがいいよ。誰も注意してくれなかったんだな、やれやれ可哀想に」と付け加えた。
ユウヤが拳を握る。
「ン゙、ン゙ン゙ーッ!」
ガン!
拳はそのまま、サトウの側頭部を振り抜いていた。
床にサトウの鼻血が散る。普通に痛い。
サトウの挑発的な態度に我慢できなくなったユウヤ。
「いだぁ!?‥‥はい、先に殴りましたー!先に殴ったほうが負けです!あんたの負け!あんただけが負け!あんただけが日本人!」
「ン゙、ン゙ン゙ーッ!」
半ばヤケクソになっているサトウが挑発を繰り返す。
ユウヤが再度拳を振り上げるが、それを背後から何者かが羽交い締めにした。
「ユウヤ君、落ち着くんだな。まずは話をしたほうがいいんだな」
樽のように太った優しそうな顔をした男だ。
かなり膂力があるようで、ユウヤの両足は宙に浮いている。
「うるせぇ、離せ!この拳を引っ込めるってことは、そりゃ曲がってることになるんじゃねーのか!?えぇ、おい!曲がったことだけは許せねぇんだよ、俺はぁ!」
「曲がったことには、ならないと思うんだな。人を赦せるのはむしろ真っ直ぐなんだな」
男はユウヤを諭すと、彼をゆっくりと地上に開放した。もう暴れる気もないようだ。
それまで黙っていた眼鏡の男が、改めてサトウに話しかける。
「ま、まずは自己紹介をしませんか」
P4Gも遊んでいます。P4Rまでにクリアせねば。
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