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17-1. あんたらグルだったのか!

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

 女性たちの叫び声が木霊する大衆浴場。

 湯煙で視界が悪い中、ミルフィーユとユウヤの戦闘が行われている。


「あー!はぁーはぁーはぁーん!ミルフィーユちゃあーん!」


 床や壁のタイルが砕ける音が聞こえる中。情けない声とともに血が数滴落ちる。

 サトウは左手の折れた小指と薬指を庇いながら、戦闘中の治癒魔法使い(ミルフィーユ)を探していた。


 女湯に突入したミルフィーユからの合図が聞こえ、女湯の脱衣所に突入したサトウ。

 そこに居合わせた女性たちから覗き魔の一味だと勘違いされた彼は、その場にいた全員にタコ殴りにされた結果、それなりの怪我を負わされていた。


 インラーンは場内に居る一般人を外へと誘導しているが、サトウはそれどころではない。

 絶賛戦闘中のミルフィーユはもっとそれどころではないはずだが、何とかして怪我を治してもらわねば。


 大衆浴場の大きな柱が砕け散る。瓦礫と土煙とともにミルフィーユも飛んで来た。


「御主人様、どこでそんな怪我を?‥‥治してあげよう。痛いが我慢するんだぞ」

「脱衣所でボコボコにされた!助けに来たのに!痛いのは我慢するから治して!」


 彼女は指が折れたサトウの左手を優しく両手で包み、治癒魔法をかける。

 相変わらず洒落にならない痛みと、骨同士が擦れる不快な音。

 止まらない涙と鼻水、冷や汗を袖で拭いながらサトウは状況を確認する。


「あぅ、あぁ。それで日本人はどこに?」

「姿が見えないから何とも。手当たり次第に拳を突くにも、ゴブリンのように破裂死させてはいけないし。手加減がね」

「中途半端な強さだから手加減が難しいってことか」


 直後、ミルフィーユの側頭部を透明な何かが殴打する。

 ぺちっと乾いた音が響くも別に痛くはないようだ。


 ステータス差。

 雑魚魔物のゴブリンがミルフィーユの尻に本気の殴打をしたとて、尻を撫でたような感触しか伝わらないように。両者のステータス差が大きい場合、強者側へのダメージは大幅に減少する。


「幸い、彼の攻撃は私には何のダメージも無いんだがね。どうしたものやら」


 しかし、ユウヤのステータスは冒険者で言うところのDランクだと聞いている。

 Dランクからの攻撃がほぼ通らないとは、一体ミルフィーユはどれだけ強いのだろうか。


「もう止めるんだ、日本人。私はだんだん君の気配が掴めてきたぞ。よしんば君がここから逃げたとして周辺には探知魔法の使える冒険者も待機している。そろそろ諦めほうがいい」


「うるせぇ!まだか、おい!どっちでもいい!とっととヤれぇ!」


「やはり仲間が居たか。御主人様、私の後ろに‥‥っぐあぁ!?」


 透明化したまま姿を表さないユウヤが、何者を急かすような声を上げ、仲間の存在を警戒しミルフィーユが前に出た瞬間。

 彼女の片腕の、前腕部分が吹き飛んだ。瞬く間に血だまりが広がる。


「治癒しなければ‥‥、御主人様!少なくとも覗き魔よりも強い、敵、が居‥‥」

「ミルフィーユちゃん、どうし、た‥‥」


 突然の眠気。

 英語の授業、まるでオーラルコミュニケーションⅡの授業中のような抗いがたい眠気がサトウたちを襲った。

 少し前から実家にあったディノブリーダー3で遊んでいます。

 が、あれ、子どもに遊ばせる難易度じゃなくない?難しすぎない?

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