14-2. グレープ味だぁ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
鬼の形相で呪詛を吐いた妖精はただの卵になった。
心做しかサトウの肩が重くなった気がする。
普通にテンションが下がる作業だった。今日、夢に出てくるかもしれない。
「ほれ、早く解呪するのじゃ」
「あぁ、あっ、あっ、ダメだ!握力も下がったのかコルクが抜けない!」
インラーンから解呪薬の小瓶を受け取るも、サトウは呪詛によるステータス低下で小瓶のコルクすら抜けなくなっていた。
小瓶を撫でるしかできなくなった彼の無様な様子を見てインラーンが吹き出す。
「ぷふっ、ガッハッハ!無様じゃのう!」
「ジジイがぁ!いいから助けてくれや!」
「すまんすまん。ささ、早く飲むのじゃ」
インラーンがコルクを抜いてくれた小瓶の中身を飲み干すサトウ。
ファンタグレープだ、これ。久々に飲んだな。
「グレープ味だぁ」
「美味いか。昔は雑巾の絞り汁みたいな味だったのじゃがな。どれ、呪いは解呪できたか?」
サトウは試しに手を握って開いてを繰り返してみる。
「やれやれ、ふふ、なるほどね」
「どうしたのじゃ」
「元が弱すぎてよく分かんないな。思わずテンパっちゃったけど、素のステータスでもコルクは抜けなかったかも」
「まぁ良い経験になったのう」
街中にもこんな危険があると知れた点では良い経験なのだろう。
駆け出し冒険者が解呪薬なんて高価な薬を買えるわけがない。しかも妖精の断末魔せいでステータスも下がればテンションも下がる。
何かの間違いで妖精を殺して呪われてしまえば、年単位で呪われたまま冒険を続けることになるのだ。厄介にもほどがある。
「そういえば養精場の職員はどうやって妖精をシメてんの」
「ステータス低下を気にしていない職員がシメるか、奴隷を雇うか。犯罪奴隷への刑罰としても扱われることがあるのう」
「妖精を何匹もシメ続けてステータス0になって死んだりしないの?」
「呪いは重ね掛けではなく上書き。何度呪われてもステータスは0ならんのじゃ」
「へー、優しい世界」
薬を飲んで解呪したサトウは、インラーンから手提げ袋を受け取る。
袋の中で蠢く妖精たちをギルドで換金するため、彼らは冒険者ギルドへの帰路についた。
最近、ファンタグレープ飲んでないな。
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