14-1. グレープ味だぁ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
陽が傾き始め、表通りの出店はちらほらと撤退している。
何とか二匹の妖精を捕らえることができたサトウは、インラーンのことを探していた。
「おお、戦果はどうだったのじゃ」
「じーさん。二匹だったよ」
「そりゃ上出来じゃな。儂も数十年ぶりに楽しめたのじゃ」
インラーンが手提げ袋の中を見せる。
そこには一〇匹ほどの妖精が蠢いていた。気持ちが悪い。
「トラウマになりそうだな」
「養精場の飼育員なんぞ、これを何百、何千と見とるのじゃぞ」
「第一次産業の従事者には感謝しないとな。これもう社会科の授業で教えるべきだろ」
インラーンが広げていた手提げ袋にサトウが妖精を投げ入れる。
昼過ぎから稼働してやっと一〇匹そこそこ。どれほどの稼ぎになるのだろう。
「さて、こいつらをギルドに納品すれば報酬が受け取れるのじゃが」
「行こうか」
「まぁ待つのじゃ。捕らえた妖精は必要なら自分でシメて持ち帰って良いことになっておる。どうじゃ、経験のためにシメてみんか」
「確かに、こいつがどういつもの卵になるのか気になるな」
インラーンは頷き、サトウに妖精を一匹握らせる。妖精は震える瞳でこちらを見上げていた。
何度見ても腹が立つ顔をしている。
「シメるのは至って簡単で、四肢をもぐだけでいいのじゃが」
「うげ。じゃが?」
「こやつらは自死意外で死ぬとき呪いのこもった断末魔を上げるのじゃ。これは全ステータスが1ランクずつダウンする厄介なものでの」
「俺、五歳児より弱くなるってこと?そもそも四肢をもぐのもかなり難易度高いけどね」
「安心せい。午前中にこれを買っておいたのじゃ」
インラーンが懐からガラスの小瓶を出す。
中には紫色の液体が入っていて、飲むと体に悪そうだ。
「ナニコレ」
「これは解呪薬。妖精がかけるような低位の呪いであれば、これを飲めば解呪できるのじゃ」
「すげー、でもお高いんでしょ?」
「当たり前じゃ。お主が一年間ゴブリンを討伐し続けて、やっと買えるかという値段かの」
「本当に高いやつだ!そんな高価な薬を『経験のため』なんてふわっとした理由で使っていいのかよ」
「儂は歳を重ねとる分、自由に使える金はたくさんあるしの。それにミルフィーユ殿からも冒険者としての常識や経験を積ませるよう頼まれとるのじゃ。気にすることはないぞ」
そこまで言うなら。とサトウが手にしていた妖精の片足を摘み力を入れる。
ペキッと骨が折れた嫌な感触が指先に伝わり、思わず手を離してしまう。
その瞬間、あんなにも柔和な顔つきをしていた妖精が、痛みのせいか目を見開いて歯をむき出し、声にならない悲鳴を上げた。
「ベヘリットみたいになってる!いいのか!このままヤッていいんだな!」
「あまり長引かせるでない。ひと思いにヤッてやるのじゃ」
「ええいままよ!」
サトウは妖精の四肢を一本ずつもぐ。
体が小さいためゴブリンの腕を抜くときほどではないが、好きになれない感触だ。
四肢を全てもいだとき、妖精はついに呪詛を吐いた。
「っあ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?よくもよくもよくも、よぐもぉお"!!‥‥この先の貴様の人生に災いあらん事を!妖精は常にお前を視ているぞ!」
「うわぁあ"あ"あ"あ"あ"!!トラウマになる!トラウマになる!」
最近、卵とか食べられてないな。
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