13-3. キュートアグレッションではないな、普通に腹立つ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「賑やかな出店通り裏の寂れた路地。妖精はこういう環境の塀の上に佇んどるのじゃ」
「え、じゃあ周辺の路地、全部チェックしていくの?」
「そうなるの。すぐ見つかるかもしれんし、見つからんかもしれん」
これは長い戦いになるぜ。
そう思ったサトウだったが、意外にも妖精は次の路地で発見できた。
「おっと運が良いのじゃ」
「マジか、ラッキー。どこどこ」
「これ!待たんか!」
無警戒に妖精へと近づくサトウに対しインラーンが声を上げた。
鶏の卵から手足が出ているような生物。これがこの世界の妖精らしい。
「あぁ、あぁぁ‥‥、塀に、座るよぉ」
サトウたちに気づいた妖精が、彼らをチラチラと見ながら何か喋っている。
「あぁ、あぁぁ‥‥、落っこちるよぉ」
そのままひとりでに塀から落下すると、卵の中身を撒き散らしながら粉々に砕けた。
「何がしたかったんだ」
「あれが妖精。人の気配に気づくと何故か塀の上から飛び降りて自死するのじゃ」
「国で保護とかしてやらなくていいのか」
「妖精は死んでも別の場所で生き返るでの。奴らはこの特性を活かして捕食者から逃げておるのじゃ」
覚悟が決まり過ぎではないだろうか。
先ほど妖精が砕け死んだ地面をサトウが見ると、その死骸はキラキラと霧散し始めていた。
「で、どこが簡単に捕まえられるって?」
「奴らは必ず飛び降りることを宣言してから自死するからの。ブツブツ言っとる間に捕まえるのじゃ」
「というか、あんなの捕まえて何になるんだ。薬の材料とか?」
「いつも食っとる卵じゃよ」
討伐依頼前の朝食に出てくる生卵のことを言っているのだろう。
「俺、あれ食ってたの!?」
「やはり知らんかったか。妖精とは食用に家畜化された魔物で、養精場で飼育されとるのじゃが、自死して逃げ出す個体もそれなりにおっての」
勝手に自死して逃げ出す卵。
住民の手伝い・薬草採取と並んで常設依頼になっている理由が分かった。
捕まえても捕まえてもキリがないのだろう。
一匹目を逃がしてしまったサトウたちは手分けして妖精を探すことにした。
出店通りの声を聞きながら、いい感じに寂れた路地を探しては覗いていく。
額に汗が滲み始めた頃、サトウは二匹目の妖精を見つけることができた。
逃げられる前に妖精を捕獲すると、手のひらの中で震える瞳でこちらを見上げていた。
妙に腹が立つ顔をしている。これがキュートアグレッションだろうか。
「キュートアグレッションではないな、普通に腹立つ」
デジモン新作が出るのでハカメモ熱が再燃している。
パンドラの塔もプレイ中なのになぁ。
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