1-3. どこにでもいる普通の高校二年生
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
特定の作品を馬鹿にするような意図もありません。
「お主にはこれから異世界転生ではなく剣と魔法の世界へと転移してもらう」
「やったぁ!」
「そんなことも言ってられんぞ。この異世界転移は恐らくお主の期待するようなものではない」
「いきなり高難度モンスターの生息する森の奥地に転移させられるとか?」
神は首を横に振り、サトウの問に答える。
「転移先は大きめの街になる予定じゃよ。問題なのは日本人がやたらと期待するチートスキルについてなんじゃが」
「‥‥もしかして僕はチートが貰えないって事ですか?」
「端的に言うとそうなるのう」
「それは残念だけど、まぁ転移先で異世界ハーレムできるよう頑張りますよ」
頑張ると言ったものの、サトウは今までの人生で特別な努力をした覚えがない。
勉強、スポーツ、人間関係、バイトに趣味、今までほぼ努力せず謎に高く評価されてきた。
転移先では多少の苦戦はあっても、少し頑張ればこれまで通り普通の人生が送れるはずだ。そうサトウは考えていた。
「頑張る、のう」
「?」
「いやさ、お主にチートはやれんし。地球でのステータスがオールSだとすると、転移後は全ステータスがGかFまで下がるはずじゃ」
「パワプロの基礎能力みたいになってる!‥‥ど、どうして?どうしてそんなに弱くなるんですか!」
サトウが息を飲む。
チートも貰えず、今までの自分のステータスから弱体化。
そんなの普通の人生なんて送れるわけがない。
「どう伝えるべきか‥‥。そもそも今までのお主は『ステータス最大強化』というチート状態だったと言えるんじゃ」
「そんなはずは!」
「無いと言えるか?心当たりは?」
心当たり?いったい何の事を言ってるんだ?
俺はどこにでもいる普通の高校二年生だ。いや、うっかり女子のスカートの中に顔を突っ込んでも頬を赤らめながら叱られるぐらいで済む点だけは、運が良いと言えなくもないのか?
と、チート状態だなんて心当たりも無く頭を抱えるサトウに、神が説明する。
「異世界ならともかく地球にはステータスオールSの人物なぞ必要ない。むしろ争いの種になりかねんし、そんなお主という異常を取り除きたい。ここまでの理屈は分かるかの」
「僕を取り除くために殺すって。こう、ゲームみたいにパッチ対応で弱体化するとか」
「パッチ対応なんて無い!これがゲーム脳というやつか‥‥、人生を舐めるなよ!」
自分を殺したトンデモジジイに「人生を舐めるな」と叱られるサトウ。
そして神は遠い目をしながら続けた。
「S級の魅力を持つお主が、先程まで一緒におった女子全員と子をなす可能性が高くての。これは絶対に阻止する必要があった」
「あの中には義母もいたんですが」
神は手を左右に振りながら「ハーレムものの主人公は基本インモラルじゃし。リト君だって妹に発情しとったろ」と吐き捨てた。
リト君が誰なのかは知らないが、サトウは何も言えなくなる。
「特に危険視されたのは、お主のステータスオールS遺伝子を受け継いだ子孫じゃ。計算上、ひ孫世代になるとその知識と地球の科学力により、ワシらが住まう神界を観測・干渉も可能になるという結果が出た」
「僕の子孫がそんなSFチックな科学者に」
「うむ。人間如きに神界を荒らされるわけにはいかん!ワシらは元凶となるサトウタケルを念のため弱体化した後、異世界に転移することを決定したんじゃ」
「ムシケラ。神特有のプライドの高さが出てる」
転移が始まるのか、サトウの足元が光り初める。
神は顎髭を撫でながら「これでようやっと仕事に忙殺される日々から開放されるわい。サトウよ、せいぜい楽しむがよい」と見送るのだった。
とりあえずマヨネーズと石鹸とオセロは流行させようと思ってます。
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