12-2. 魔物以上に害獣認定されてて草
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
しばらく森の中を歩くと、水の流れる音が聞こえてくる。
「グエッ、グエッ」という聞き慣れたゴブリンの鳴き声。
いつもの狩り場だ。ゴブリンたちは決まってこの場所に現れる。
この場所で毎日のように仲間のゴブリンが狩られているのだから、棲み家を移すなり、辺りを警戒するなりしても良い気がするのだが、相も変わらずゴブリンたちは川辺で戯れている。
「やるか。俺もゴブリン討伐にはかなり慣れてきたからな」
「この二週間でステータスももう少しで六歳児に届きそうだし、御主人様はまだ伸びるぞ」
「五歳児と六歳児の戦闘力に特に差は無い気がするのじゃが」
インラーンのぼやきも意に介さず、ミルフィーユがゴブリンたちの前に躍り出た。
突然現れた上半身裸のスキンヘッドの大男にゴブリンたちが狼狽える。
「ハッ!」
ミルフィーユがポージングを取る。
サイドトライセップスだ。
「今日は上腕三頭筋の日なんだ」
ミルフィーユが笑顔で筋肉を魅せつけると、ゴブリンたちが狂ったように彼女の尻を撫で始める。
彼女の尻とゴブリンの手がぶつかりあう度、バチッ、バキッ、という痛々しい音が辺りに響いた。
「うっ!ふぅ、ああっ!イイ、さっきの一撃は良かった。もう少し強めにきてくれてもイイ‥‥」
「サトウ殿、儂はいったい何を見せられとるのじゃ」
「あれがミルフィーユちゃんの魅了スキルだ。ただ単にゴブリンを惹き付けるだけじゃ物足りなくなってポージングを取り始めたんだが、そこに攻撃を受けて負荷を上げているらしい。ちなみに俺にもよく分かってない」
周辺のゴブリンが全てミルフィーユの上腕三頭筋と尻に釘付けになったところで、次はサトウの出番だ。「うわーっ」と情けない雄叫びを上げながら突っ込んでいく。
タイミングを図ってゴブリンの片腕を掴み、片っ端から腕の筋を伸ばしていく。
片方の腕だけが異様に伸びたゴブリンたちは、姿勢を維持できなくなり次々と倒れていった。
その後は、サトウとミルフィーユで手分けしてゴブリンにトドメを刺し、討伐証明部位を剥ぎ取っていく。
「いいぞ、御主人様。ゴブリンの腕を抜くのにも慣れてきたな」
「ミルフィーユ殿におんぶに抱っこなのじゃな。こりゃ大変じゃぞい」
二人の狩りを見ていたインラーンが笑った。
サトウが主体となって魔物と戦闘をするには、ステータスも経験も装備も、全てがまだ足りないだろう。
彼のメイン武器はパチンコ。サブ武器が果物ナイフ。
特にパチンコなど腰に差しているだけでゴブリン討伐に使用していない。
今の実力ではこれでゴブリンを撃ったとしても「痛っ」で終わってしまうだろうし、そもそも動く相手に当てる自信もない。
運良く急所に当たれば殺傷することもできるかも知れないが、討伐証明の皿を割ってしまう恐れもあるため使用を控えていた。
使用を控えるような武器の時点で、メイン武器としてはどうなのかという話である。
「今はミルフィーユちゃんが惹きつけて、俺がゴブリンの腕を抜くってパターンが精一杯だな」
「戦術の幅を広げるためにもインラーン氏のように前衛ができる人物を仲間にしたかったのさ」
そろそろ港区女子になるため動かねば。と思って気づけばもう6月。
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