9-3. あいつらのどこが「どこにでもいる普通の高校生」だ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
土下座するミルフィーユを載せた荷車を引くサトウ。気づけば街の門に着いていた。
サトウは門番にギルドの認識票を見せ、今回の討伐結果等を軽く伝える。
その会話中、門番はチラチラと荷車で土下座するオッサンを見ていた。
ここまで二人の間に会話はほとんどなかった。
荷台のミルフィーユがメッカへ祈りを捧げていることもあるが、初めての命のやりとりにサトウも気が滅入っていたのだ。
ギルド方面へ進むに連れ、人々の声も賑やかになっていく。
日常に戻ってきた感じがして落ち着いたのか、二人はポツリポツリと話し始めた。
「御主人様、これから冒険者としてやっていけそうかい?」
「どうかな」
「今後、魔物と戦っている自分の姿がイメージできたのなら重畳なのだけど」
「うーん。それで言うと俺の根性や実力的には、これで敵に向かってパチパチするのが限界かなとは思ったな」
「それで十分さ。となると御主人様はこれから中・後衛職の冒険者になるとして、前衛が必要になってくるな」
「前衛かぁ。ミルフィーユちゃんが居れば事足りるんじゃ」
「確かに私は強いが筋肉治癒魔法使いだぞ。どちらかといえば中衛で前後の仲間に気を配る役さ」
「ミルフィーユちゃんで前衛が務まらないのか」
「務まらないわけではないが、一三歳の看板娘である私に前衛を任せ続けるのは外聞が悪いだろう」
「君より強くて敵を引き付けられる人間って、そんなの居るか?」
「むぅ、そう言われると‥‥。私よりも強く、魅力的な冒険者など存在しないかも知れないな。しかしだ御主人様、それなりに強い前衛職を仲間にすべきだということは覚えておいてくれよ」
「まぁ、そうだな。探せたら探そうな」
「そんな行けたら行くみたいな。あまり酷ければ児童相談所に訴えるぞ」
「児童相談所の人も大困りするんじゃないか」
そうやって話しているうちにギルド前だ。
まだミルフィーユが祈りを止められるほど陽は傾いていない。
荷車を扉横に停めたサトウは、荷台に彼女を置いたまま受付に向かうことにした。
「サトウさん、お怪我はありませんか?討伐証明はこちらへどうぞ」
「怪我はないけどヘトヘトかな」
サトウは受付カウンターに、剥ぎ取った河童の皿を六枚置いた。
「ゴブリン六体ですか!初討伐おめでとうございます。報酬は一万八千ゴールドになります」
市場に並ぶ食材の値段を見る限り、一ゴールド=一円と考えていいはずだ。
ということはゴブリン一匹で三千円。ハブの捕獲報酬か何かか?
私は誰だ。ここはどこだ。誰が生めと頼んだ。誰が造ってくれと願った。
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