9-1. あいつらのどこが「どこにでもいる普通の高校生」だ
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
初心者の森の中。メッカに向けて祈りを捧げるミルフィーユ。
ゴブリンは、そんな彼女を二度三度と殴りつけると尻を撫でる。
ゴブリンはなぜか彼女を殴打しては尻を撫でるという奇行を繰り返していた。
「ミルフィーユちゃんの尻に興味津々だ!」
「ゴブリンというのはそういう魔物だ。人間を見つけると殴って昏倒させ、なぜか尻をズタズタにする習性がある」
サトウの疑問に、ミルフィーユが殴られながら答える。
ゴブリンの尻を撫でるような行動も、よく見れば指の先まで力を込め、抉るような一撃を加えていた。
ゴブリンの殴打も、尻への一撃もミルフィーユには全くダメージを与えられていないことから、両者のステータスにはかなり開きがあるのだろう。
「こんな極悪生物、初心者の森にいちゃダメだろ」
「それより御主人様。ゴブリンは今、私に魅了されている。囮になっている間に戦闘の練習をしてみてはどうだろう」
「戦闘の練習ったって。どうすりゃいいんだ。いや、そうか」
サトウは「冒険のしおり」を取り出す。ゴブリンの生態のページに討伐のヒントがないか探すためだ。
先ほど教わった討伐証明部位についての情報もちゃんと記載されている。
やはり注意書きや説明書には目を通すべきだ。
ページを捲っていくと、ゴブリン討伐のセオリーという見出しが目に付く。
ページには腕が抜けやすい、とあった。
ゴブリンを複数人で囲み、隙をついて片腕を強く引っ張るといいらしい。
「脱臼しやすい生き物ってことか?」
サトウは、ミルフィーユの尻に夢中のゴブリンの背後に回る。
子どものような大きさというゴブリン。近づいてみると思ったより大きい。
腕を振り回す音、ミルフィーユへの殴打音、どれをとっても殺意100%だ。
五歳児よりも貧弱なステータスの彼は、思わずゴブリンを前に立ち尽くす。
「大丈夫。この勢いで振り回している腕だ。少し掴んでやればゴブリン自身の力で勝手に抜けるさ」
ミルフィーユに励まされ、サトウはさらに一歩ゴブリンに近づく。
あとは鋭い爪や、鱗などで怪我をしないよう気をつけつつ、その腕を掴んでただ引っ張るだけだ。
「ええいままよ!」
タイミングを図ったサトウが、ゴブリンの振りかぶった右腕を掴んだ。
あまりのソフトタッチ振りに掴まれたことに気づかぬゴブリンが右腕を突き出す動作をすると、ゴリュゴリュという肉や骨が擦れるような独特な振動が、彼の手のひらから伝わる。あまりの不快さに手を離すとゴブリンはそのまま倒れ込んだ。
これ、途中まで八丁堀の次話のつもりで書いてました。
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