7-1. 鬱陶しいテンション
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
薄暗いエントランス。サトウとミルフィーユは長椅子に隣り合って座っていた。
この宿の主人は合言葉を確認して中に招き入れた後、奥に引っ込んでしまった。
オ"ッオ"ッオ"ッオ"ッ!ンア"ァ、ンア"ァ!
ア"ッ‥‥!?効クゥ!効クナァ、コレェ!
モットオ"ッ!オ願イ!モットイジメテェ!ウッ!フゥ、イイ筋肉ダァ!
「これ、ずっと聞いてると頭おかしくなりそう」
「そうだな。私もおかしくなりそうだよ」
「多分だけどミルフィーユちゃんと俺で、おかしくなる意味合いが違うな」
「まぁここはそういう施設も併設した宿だからな」
そういう施設も併設?
この世界に来てから、獣人女性にはボコボコにされ、奴隷商には持ち金のほとんどをブン取られた挙句よく分からないムキムキの奴隷を押し付けられた。
この後も酷い目に合うに決まっている。逃げたほうがいいかもしれない。
「で、でもミルフィーユちゃんは興味ないもんね。こんな店。まだ一三歳だもんね」
「一三歳だからこそ興味津々さ。そもそもこの宿は私が奴隷落ちする前に作ったんだ」
「もしかしなくても冒険者を拉致してたときの拠点にしてたろ」
「確かに勧誘した冒険者とは、教団本部へ連れ帰る前にこの施設で運動したものさ。懐かしいな」
やっぱりここで運動♂したんだ。自分も運動させられるのかとサトウが自分の尻を守る体制に入ると、男たちの喘ぎ声の聞こえていた扉から宿の主人が顔を出した。
「ミルフィーユ様。どうか皆に挨拶だけでもお願いできませんか?」
「そうだな。皆がどれだけ成長したか私も見ておきたい。さ、御主人様も行イこう」
「嫌だ!挨拶♂は勘弁してくれ!挨拶♂だけは!」
嫌がるサトウをミルフィーユがひょいと抱えて連行していく。
通された部屋は壁一面が鏡張りになっており「俺はここであらゆる角度から見られながら抱かれるのか」と思ったサトウだが、あることに気づいた。
部屋にはダンベルやベンチプレスなど、まるで日本のトレーニングジムに置いてあるような器具が揃えられていたのだ。
「‥‥トレーニングジム?」
「よく知っていたな。わざわざ運動するための施設なんて人気も知名度も無いのに」
「勧誘した冒険者と運動したって」
「教団本部へ向かう馬車もすぐには用意できないからな。それまで体が鈍らないよう、ここで運動してもらっていたんだ」
紛らわしい。てっきりここはハッテン場なのかと思っていた。
誤解が解け安心したサトウを余所に、上半身裸の汗塗れの男たちがミルフィーユを取り囲んだ。
「ミルフィーユ様ぁ!あぁ!ミルフィーユ様ぁ!」
「お会いできるのを今か今かと待ちわびておりました!」
「凄い筋肉だ!どれだけ虐め抜けば、こんな躰になれるんだ?」
「はっはっは、君たちも良い筋肉だ。Muscle bless you」
「鬱陶しいテンション」
ミルフィーユと男たちが互いの筋肉を褒め称え合う。
男同士で胸筋を揉み合う狂気の絵面。
これが女同士であればどれほど良かったかとサトウは考えていると、宿の主人から声をかけられた。
これから今晩宿泊する部屋へ案内してくれるようだ。
ミルフィーユも筋肉自慢に満足したらしい。二人は主人の後を着いていく。
この宿で一番部屋を用意してくれたようだ。ありがたい。
トップオブトップ教とかいう邪教団体が運営する宿でさえなければ最高だったのに。
あんまり汚い話なんか書きたくなくて。
プリキュアとかみたいな話が書きたいんです。本当は。
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