6-2. トップハムハット卿みたいな名前の教団
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「連れ去りミルフィーユ、ですか。とんでもない奴隷を購入されましたね」
ミルフィーユのステータスを確認していた受付嬢が呟いた。
「なにそれ」
「彼は二つ名付きの犯罪奴隷です。特別監視下に置かれているとあります」
「ガチ犯罪者ってこと？」
「殺人はしていないようですが。彼は冒険者時代、少なくとも七人の冒険者を再起不能、一〇人を拉致しています」
「ヤバいって。てか一〇人も拉致して何したのミルフィーユちゃん。ナニか？」
荒事に慣れている受付嬢も心做しか緊張した様子でミルフィーユの言葉を待つ。
自分についての話を腕組みしながら聞いていた彼女が口を開いた。
「さっき冒険者をしつつ布教活動をしていたと言ったろう」
「布教活動で何で拉致する必要が？」
「それは彼の二つ名に関係しています。ですよね、トップオブトップ教三大司教『連れ去りミルフィーユ』さん」
トップオブトップ教三大司教って何。知らない情報がどんどん出てきて怖い。
「拉致だなんて酷いな。一〇人ともトップオブトップ教で元気にやっているはずだが」
「布教って。冒険者を連れ去って無理矢理信徒にしてたってこと？」
「無理矢理だなんて！ただ教団本部に招いて調教しただけだ！」
「言い分が犯罪者のそれだもんなぁ」
「お待たせしました。まぁミルフィーユさんのステータスも問題ありませんよ」
「問題はないはずが無くないか」
「彼はすでに一度逮捕された上で犯罪奴隷になっています。特別監視下に置かれているのであれば所在地は常に騎士団にも共有されますし、ご安心ください」
「引くほど厳重に監視されてる」
サトウは日本で、アメリカ人美女の義母と、美人三姉妹と、金髪巨乳ギャルと、美人生徒会長から、カップル用GPS追跡アプリをスマホにインストールされていたことを思い出す。
あれ考えた人間も、インストールしたがる人間もメンヘラ極めてるよね。
「これでパーティー登録は行えますが、希望のパーティー名はありますか？」
「本当にこの犯罪者、連れてっていいの？後で捕まらない？」
「ミルフィーユさんが新たな連れ去り事件を起こさない限りは大丈夫ですよ」
「当事者じゃないから適当言ってない？それにしてもパーティー名か。悩むな」
「御主人様。ここは『筋肉の監獄』というパーティー名はどうかな」
「大丈夫。ちょっと黙ってて」
サトウは数秒考えてみたが何も思い浮かばなかった。
そもそも今日は色々なイベントが起こりすぎだ。思考力も低下しているのだろう。
「パーティー名は一旦保留でもいいかな」
「構いませんよ。パーティー名が決まりましたら、その時にお声がけくださいね」
「ありがとう。じゃあ今日のところは失礼するよ。また明日」
パーティー登録を済ませた二人は冒険者ギルドの外に出た。
陽も傾き始め、通り沿いの建物の窓からは明かりが漏れている。
ミルフィーユが土下座していないことにサトウは気付いた。
「これだけ陽が傾いてれば自分で歩けるのか。それなら荷車は自分で引いてくれよ」
「一三歳の美少女であるこの私に荷車を引かせるだなんて、とんだ異常性癖者だな」
「はいはい、俺は異常性癖者ですよ。やれやれ、この後は宿屋探しか」
「任せてくれ。近くに我が教団御用達の良い宿があるんだ」
「そこって何らかのテロ組織の拠点になってたりしないよな。信じていいんだよな」
ヒカリアンよりは、ボブとブーブーズが好きです。
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