6-1. トップハムハット卿みたいな名前の教団
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「陽の下を歩けないのは教団の教義だって聞いてるけど」
「私の所属する教団は邪教なんかじゃないさ」
ミルフィーユからの返答に安堵したサトウは、受付嬢へ向き直る。
「邪教じゃないってさ。ちなみに邪教徒だとヤバいのかな」
「過激な信徒が多く、信仰する神も特殊な教団のことを一般的に『邪教』と呼んでいるだけなので、邪教徒だとしてもトラブルさえ起こさなければ大丈夫ですよ」
「であれば、邪教っちゃ邪教なのかも。‥‥いや、それより怪我も治ったことだし、今日中にパーティー登録だけ済ませたかったんだ」
サトウの怪我が治っているのを見て小さく拍手する受付嬢。そして「パーティー登録でしたら受付へ」と言って受付カウンターへ戻っていく。
二人がカウンター前へ向かうと、すぐに受付嬢が顔を出した。
「お待たせいたしました。パーティー登録には再度ステータス確認が必要になります。順番に決済機へお手をどうぞ」
ギルドを初めて訪れたときのようにサトウは決済機の液晶に手をかざした。
カウンター内では受付嬢がステータスを確認し始める。
「今度は何を確認されてるのかな。ただのステータス確認だけ?」
「主にパーティーの二重登録を避けるための確認ですね。サトウさんの場合ですと結んでいる奴隷契約が違法なものでないか、なども表示されるんですよ」
「そんなことまで分かるんだ」
「お連れの方の場合、所属している教団名や、奴隷区分なども表示されますね」
「教団って奴隷になったら破門になるわけじゃないんだな」
「それは奴隷になった理由にもよるかと」
「そりゃそうか。破門になったら治癒魔法が使えなくなったり?」
「いえ、教団に所属することで治癒魔法が使えるようになるという話ではありませんから」
「治癒魔法が使えるから教団に勧誘されるってこと?」
「ええ。その後、信徒の多くは神殿や治療院勤めになります。意外と無宗教の治癒魔法使いも多いですよ」
「無宗教でもいいんだ。ミルフィーユちゃんも神殿とかに居たの?」
「まぁそうだな」
「何をしたら神殿勤めから奴隷落ちするんだよ」
「休日には、冒険者もしつつ布教活動も行っていたからな。その活動中にちょっとトラブルを」
ミルフィーユは冒険者でもあったらしい。
奴隷落ちするまでのトラブルとは一体何なのか。
「サトウさんのステータスに問題はありませんでした。お連れの方もどうぞ」
「ミルフィーユだ。よろしく。ケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘だと思って接してくれ」
「ミルフィーユ‥‥さん。はい、決済機へお手を」
「ちゃんだ」
受付嬢はミルフィーユの挨拶を全てスルーするし、彼女のステータスも確認し始めた。
流石だ。厄介な冒険者の扱いにも慣れているのだろう。
「ミルフィーユちゃんが何て教団に入ってるのか訊いたことあったっけ」
「言ってなかったかな。トップオブトップ教だよ、御主人様も興味あるか?」
「すげぇ。トップハムハット卿みたいな名前の教団。悪いけど興味はないね」
「残念だな。気が変わったら言ってほしい」
サトウの気が変わることはない。絶対に。
上半身裸のミルフィーユの右胸に刻まれているタトゥーの男の名は「トップ」。
もしかしなくても教団に関係する人物だろう。
きかんしゃトーマスよりは、ヒカリアンが好きです。
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