5-2. まるで邪教の信徒のようだな
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
重い荷車を引き続け、やっとギルドのある区画の通りに出た。
この世界の金銭価値を把握するため、ついでに出店の料金表を眺めながら進む。
そんなサトウと荷車を見た街の人々がギョッとした様子で避けていく。流石に土下座した大男を乗せた荷車は、この世界でも目を引くらしい。
サトウはギルド前で荷車を止め、荷台のミルフィーユに声をかけた。
「ミルフィーユちゃん。着いたよ」
「‥‥」
「もうしんどいよ!このルール!」
陽の下に居る限り、ミルフィーユは土下座したままだ。
しかし、ギルドの入り口をくぐるまでに日陰は見当たらない。
ギルド付近にいた屈強な男たちも「何だ何だ」と様子を見に来る。
正直恥ずかしい。だが彼らに助けを求めなければこの先に進めないのも事実だ。
「あっ、あのぉ、すいませぇん」
「何だ何だ、兄ちゃん。どうしたどうした」
呼びかけに応じてくれたのは革鎧にチェインヘルムを着込んだ一団だった。
二〇人ほどが同じような武装をしているため、きっとこういうコンセプトで集まっているのだろう。
「連れなんだけど、宗教上の理由で陽の下を歩けなくてね。こう、円陣というか、スクラムというかで日陰を作って一緒に歩いてくれないかな」
「スクラム?それなら俺達に任せておけ。最高のスクラムを魅せてやる」
言うが早いか男たちは荷車を囲んだ。あっと言う間に荷車が人垣に隠れる。
それにしても。
「やれやれ、ガチすぎるな」
「ミルフィーユちゃん。これならどう、動けるかな」
「あぁ!御主人様!これ、これ、すーっごいこれ。これ、すーっごいぞ。こんな屈強な男たちが私を取り囲んで!どうするつもりだ!一三歳になる看板娘である私を取り囲んで!どうするつもりだ!」
「気にしないでね!この人ちょっとおかしいんだ。そのままギルド内まで進んでほしい」
革鎧にチェインヘルムを着込んだ一団とギルド内まで移動する。
ガチすぎるスクラムで現れたその一団にギルド内はやや騒がしくなっている。
早く解散させたほうがいいだろう。サトウは最初に話したリーダーらしき男に声をかけた。
「助かったよ。後日ちゃんとお礼をさせてほしい」
「俺たちは最高のスクラムを魅せたかっただけだ。気にしないでくれ」
そう言うとリーダーらしい男は一団を率いてギルドを後にした。
サトウは「格好良い」と言いかけたが、最高のスクラムを魅せたかったって何。
騒ぎに駆けつけてきたのは最初に対応してくれた受付嬢だった。
「お姉さん。買った奴隷が陽の下を歩けなくて、こんな騒ぎに」
「いえ、あの方々はいつも問題を起こしますので、お気になさらず。‥‥それにしても陽の下を歩けないですか」
「何か問題でも。いや、ここまで問題しかなかったけど」
「まるで邪教の信徒のようだな、と」
邪教の信徒?
今日一日で何悶着あるんだ。そろそろ勘弁してほしい。
今回の挿絵、どっかで見たことあると思ってたんですが、あれだ。
デス・パレードのOPですね。BRADIOのやつ。
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