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4-3. ケーキ屋さんの今年一三歳になる看板娘

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

 サトウがどうにかこの場を穏便に済ませられないか考えている内に、目の前の奴隷商と奴隷は、何やら感動的な雰囲気になっている。

 今は二人して涙ぐみながら手を握り合い「幸せになるんだぞ」「健康には気をつけるように」などと声をかけあっている。


「さぁ、御主人様。まずはその怪我の手当てから始めようか」

「え、ア、ハイ」


 いつの間にかサトウの目の前に来ていたミルフィーユ。

 彼女は跪くと指が折れた左手を優しく両手で包んだ。

 触れられた左手が少しずつ暖かくなっていく。心地良いかもしれない。これが治癒魔法か。


「熱っ!いや、痛ッッッタァ!?」


 心地良い温かさなんて話ではない。どんどん熱くなっていく。

 お風呂の温度は三九度どころか、入るときに悲鳴を上げてしまうタイプの温泉ぐらいの熱さだ。

 あと何かめちゃくちゃ痛い。左手から鳴っちゃいけない音も鳴り出した。


「ミルフィーユさん!」

「ちゃんだ」

「ミルフィーユちゃん!痛すぎ、これ、何がどうなってるの、怖い!」

「見ないほうがいい」

「一瞬だけ!一瞬だけ見せて!」


 サトウの左手から、ミルフィーユの両手が離れる。

 第三関節から曲がってはいけない方向に折れ曲がっていた左手の小指と薬指は、サトウの意思とは関係なく前後左右に飛び跳ねるように動いていた。

 子どもの頃に庭で見た、切れたトカゲの尻尾のようだ。


 そのトカゲの尻尾のようになった指が動く度、骨同士が擦れるような音とともサトウに激痛をプレゼントしていた。


「何これ凄いな。凄いことになってるよこれ。具合悪くなってきた」

「だから見ないほうがいいと言ったんだ」

「俺の指、壊れちゃったのぉ?」

「治っている最中だ。直に痛みもなくなる」


「‥‥私は正規の治癒魔法使いではないと紹介されただろう?」

「確かに。そんなこと言われたかもぉ」


「その、私はだな。筋肉(・・)治癒魔法使いなんだ」


 ミルフィーユはバツの悪そうな表情をしている。

 正規の治癒魔法使いとやらを見たことがないサトウにとっては、彼女がなぜそんな表情を浮かべるのか理解できなかった。

 あと熱いやら痛いやら。そんなこと考える余裕もなかった。


「や、やれやれ。そんなこと関係ないよ。き、君が何魔法使いかなんて」


 サトウは涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、何とか笑顔を作る。

 つられてミルフィーユもまた涙ぐんだ。後ろで様子を伺っていたであろうアッサラームの鼻を啜る音が聞こえる。


 しばらく激痛に耐えるとサトウの指は元通りになっていた。


「それではサトウ様。ミルフィーユの購入手続きに参りましょうか」


 アッサラームの持ってきた奴隷売買についての書類に目を通しながら、サトウは「ところで俺はこの奴隷を買うだなんて一言も言ってない気がするな」と思ったがもう遅い。


 こんな痛い治癒魔法の使い手、やっぱりいらない。なんて言い出せる雰囲気では無くなっていた。

 ケーキ屋さんの今年13歳になる看板娘が最初の仲間です。やったね。

 っぱ、異世界転移なら可愛い女子を仲間にしたいよなぁ。

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