5年間の夢
冷たい金属のベッドに横たわる。天井には無数の光が淡く輝き、まるで星空を見上げているようだった。これがコールドスリープの部屋か。
私は震える手で、額に張り付いたコードを触れた。このコードが私を仮死状態へと導き、私が作り上げた世界へと連れて行ってくれる。5年間。その間、私は永遠の眠りにつき、現実の世界から隔絶された、私の理想の世界で過ごすことができる。
だが、それは同時に、現代への帰還を断つ選択でもある。5年後、このコールドスリープから目覚めれば、私はあの世界に存在しなくなる。死と変わらない。
それでも、私は決意を固めた。現実の世界は、私にとってあまりにも辛すぎた。失恋の痛み、仕事のプレッシャー、孤独感。全てが重くのしかかり、息をするのも苦しかった。
私は目を閉じ、心の中で理想の世界を思い描いた。そこは、どこまでも続く青い海と白い砂浜が広がる楽園。優しい太陽の光が降り注ぎ、心地よい風が頬を撫でる。そして、そこには、私を愛してくれる人が待っている。
「準備はいいですか?」
機械的な声が響き渡る。私はゆっくりと頷いた。コードが私の脳に接続され、冷たい感覚が全身を駆け巡る。意識が遠のいていく。
「さよなら…」
私は呟き、永遠の眠りについた。
5年後、私はこの世界で、永遠の眠りにつくことになるのだろうか?それとも、私の作り出した世界で、幸せに生きることができるのだろうか?
答えは、もう知ることはできない。