FUCK!THE ANGEL!!
まるで世の中はクソだな。34階立てのビル、屋上にて、周りを見晴らしそう思う。夜景は美しいだのほざく馬鹿共の気がしれん。ぐ、頭がグラングランだ。赤ワイン飲みすぎたせいだ。
「クソ野郎め。これでも喰らえ。」
チャックを一気に下げ、外気にペニスをさらけ出す。ここまでやれば、あとはなにをするか解るだろ?さぁ、脳から脊髄、そして胃腸、肛門へ命令は行き渡った。
「発射!」
黄色い液体が34階から地上へ舞い降りる。
「ぐへへ、なんにも知らない下界のクソ野郎共め。アンモニア臭に染まっちまえ」
「おじさん、最低だね」
あん?誰だ誰だ。オレ様に説教たれるクソ野郎は。オレはまだ微かに残ってる自制心で周りをキョロキョロしてみる。すると、なんだ、こりゃ、へへへ、酔って幻想でもみちまってるのか?オレってこんなメルヘンな感情あったのか?ディズニーも真っ青だな。
「おじさん、違うよ。僕はおじさんが生み出した幻想でもないし、ディズニーキャラクターでもないよ」
顔が真っ白で金髪、天使のわっかに翼を生やした少年…いや、クソ餓鬼が呟いた。
「おじさん…仮にも天の使いに向かってクソ餓鬼はないんじゃない?そもそも餓鬼って地獄の生き物だし」
「しるかクソ餓鬼め。ぐふっ、オレのただの想像のくせにー。そもそもな、てめーみたいなファンタジー的な存在が最近メディアに出過ぎなんだよぉ。なんだ、やれ妖怪?怪物?モンスター?悪魔?妖精?へっ、皆そんな事しか考えれねーのかクソボケめ。そんなくだらねー事考えるヒマあったら太宰読め、太宰」
「おじさん、酔いが増してきて言ってることがしっちゃかめっちゃかだよ。それにそんな否定的だったら、僕がなんでこの物語に出てきたのか話が進まないじゃないか」
「いいんだよ。そんなん気にしなくても。所詮物語は物語。その一つの物語がありゃ世界がある。だが逆に考えて物語一つに対し世界の断片を伝える義理なんてねー訳だ。そう、お前はオレのただの断片。脇役。村人A。OK?」
「もういいよ。なんでも。なんかそうしないと終わりがみえてこなさそうだし」
「よし!偉いな。うん、偉い偉い」
あー、やべー、本格的に可笑しくなってきた。くひひひひ。なんでオレはぁ、こんなクソ餓鬼と普通に会話してんだ?あれ?オレここまできて名前すら名乗ってない?なに?なに?どうすればいい?What do you do?テンパってきた。あぁ、もうダメだ。
そして34階から地上へ向かって嘔吐。
「ぐえぇぇぇ〜〜」
「もう、おじさん。これじゃあこの物語がまるで『駄目な大人の作り方』みたいじゃないか」
「あぁ?なんだとてめー。オレはなぁ、こうみえても有名な小説家なんだぞ。セカチューをも超える大ヒット作ったんだぞ。金も腐るほどあるんだぞ。女とも週に一回入れ替えでセックスするんだぞ」
「そんなお偉い人が普通ビルの34階から放尿なんてするかい?あ、付け足しで嘔吐も」
「うるせー。天才のやる事に口出しすんな。殴り殺すぞ」
「僕も天使やって長いけど、殴り殺すって言われたの初めてだよ」
あー、なんだよこのクソ餓鬼は。鬱陶しい。ふぅ、さっきの嘔吐で大分思考が冴えてきたぞ。
「さてはお前、オレをここから突き落とすつもりだな」
「は?」
「天使ってのはあの世の導き、つまりはオレに死が近づいてるってことだ。ははは、こりゃ傑作だ。名作を作りすぎて、とうとう自分の人生を駄作扱いしちまったって訳か、オレのイマジネーションは」
「あのおじさん?おじさん、本気で天国行けると思ってんの?少なくともおじさん、今日だけで罪が相当増えたよ。挙げ句の果てに、今おじさんさ、僕をどう殺すか考えてるし」
げっ、なんでバレた。あ、いや、バレて当然か。コイツは元々オレのイマジネーションだし。んー、よく考えてみりゃ困ったもんだぞ。どうやったら殺せる?オレがコイツの存在を認めなきゃいいのか?いや、だったら登場早々に消えてるはずだ。
「あのさー、何回も言うけど、僕はおじさんの妄想じゃない。僕は僕。天使なの。神様の使いなの」
がー、だまれフィクションが、ただのイマジネーションが。あぁ、コイツを消したい、殺したい、壊したい、バラバラにしたい…
色々なコイツを想像する。雷に打たれて黒コゲになったクソ餓鬼、鎌鼬に五体をバラバラにされて地上に落ちていくコイツ…あ。
「おじさん、急にどしたの。なんか思い出した?」
「今な。うん。色々なお前を想像した時点で。うん、今オレの想像、乏しくて、つまんなくて、カスだったろ?」
「うん、小学生以下だね」
「そうだろーな。まぁ、有名小説家もさ。ネタ切れがある訳だわな。ネタが次から次へと出てきたらそれはそれでいいんだがよ。オレはもう駄目みたいだわ。お前みてーなしょうもない餓鬼しか作れない、殺し方も低レベル」
「だから自殺するの?」
そう、全部思い出す。オレがここにきた目的。
「へへ、てめー本気でオレが34階ビルから放尿目当て来たと思ってたのか?オレは天才だぞ。天才はなぁ、死に方も天才じゃなきゃいけねーんだよ」
「あー、もう解ったよ。じゃあ、さっさと死ね。そして地獄へ落ちろヒネクレ者め。もう無能小説家の御託は聞き飽きた」
「馬鹿野郎。無能ってのはなにも作りだせねー奴が無能だ。オレは最期にてめーを作り出してやったんだ。…本望だ」
そしてオレは後ろ向きに倒れ、クソ餓鬼を一瞥し、下界へ落ちていってやった。ちなみに、アスファルトに叩きつけられた時に異臭を嗅ぎ取ることができたオレはやっぱり天才だったと思う。みろ、クソ餓鬼め。ざまーみやがれ…
僕は一応、神様に今日あった事を報告した。まぁ、地獄行きのクソ親父なんてほっといてもいいんだけど。
「今日、22時45分に芥河裕ノ助という中年作家が34階ビルから自殺しました。頭から落ちたのに、しばらくは意識があったみたいです。この男、死ぬ前に相当酒を飲んでおり、たまたま通り掛かった僕を最期まで自分の作り出した妄想だと思っていたようです。あー、そうそう。酔ってたせいで自分を勝手に天才作家だと思い込んでたのは傑作でしたよ」