見えていないのは
そうか、こいつに聞けばいいのか。
村長と話すことに夢中で忘れていたが、まず本人に聞くべきだった。
「なぁお前。お前は星霊、なのか?」
「……??ぼく?……わかんない?」
こてん、と首をかしげ困ったように眉をよせる。
「分かんない、か……」
本当に、何者なのだろうか。
名前も、両親も、魔力のことも分からない。“精霊”は知っていて自分が“星霊”かは分からない。村人のほとんどは見えていないが、3人(その内1人は赤ん坊)だけには見えている?
整理をすればするほど分からない事だらけだという事だけがハッキリしていく。
「そうだ、村長さん。この村にアイラとカラって人間は居ませんか?その2人、正確にはそれにトーマってさっきの赤ん坊もだが、この子の事が見えてるらしいんです何か話が聞けるかも」
「アイラもカラも居るが……2人ともまだ乳飲み子じゃよ」
だめか。
「他に見えてる者は居らんのかね?」
そう村長がそう問いかければ大きな目を瞬かせ口を結ぶ。思い出そうとしているのだろうか。
「カイもサラもイブもザンザールもガスキーもルルドもミリヤもダザームもルクもミラもマックスもナナセもそんちょーも、ほかのみんなも、みんな、まえはおしゃべりしてくれたのに、いまは、してくれない」
本当に唐突だった。
声の調子も直前まで変わった様子などなかったのに。
見開いた瞳が潤みだし、大きな光の粒が零れ落ちた。
ずっと我慢していたのか。何かが壊れたようにそれは次々と溢れ出す。
唇を震わせ泣きじゃくる姿は酷く痛々しい。
余りにも急で、どうして良いか分からなくなる。
「あーーー、な……なんとかしてやるから、1回落ち着け、な??」
行き場を探す手でバタバタと空気を搔き回し椅子から腰を浮かす俺の姿は傍から見ればかなり滑稽だろう。
「何かあったのかね」
村長も心配そうに聞いてくる。
「泣き出ちまって…………皆、前はこいつの事見えてたのに、見えなくなったって。ぁ、行方不明になってる子供とか!居ねぇか!?認識阻害の魔法かもしれない!」
「わたしの記憶にある限りではこの村から行方不明者は出てないけれど……その辺りの記憶も弄られている可能性もあるねぇ……」
誰が、何の為に。
「何か、心当たりは?」
少しでも手がかりが欲しいと聞いてみるが、村長は力無く首を横に振るだけだった。
落ち着かせようと手を置いた小さな背中は未だに小刻みに震えている。