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始まりの記憶  作者: 山田なお
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魔力と精霊

 「なぁ、お前何であんな所に転がってたんだ?」

 昼飯を食い終わり一息をついたころ。

 気になっていたことを聞いてみた。

 「えっとね、ホシをみてたらおちちゃったの」

 「落ちた?何処から?」

 「ガケのうえだよ。ストーンって」

 …………聞き間違いだろうか。

 「崖ってお前が転がってた側の??」

 「うん。ストーンっておちて、ズドーンって」

 揶揄われているのか本気なのか。表情だけは大真面目にそいつはそんな事を言う。

 軽く50mはあるあの場所から落ちれば普通の人間ならひとたまりもない筈だというのに、目の前にいる人間は昼飯を3人前平らげピンシャンしている。

 「ぼく、ケガしてもへいきなんだよ。すぐなおるの。すごいでしょ!」

 えっへん。と聞こえてきそうなくらいに胸を張るそいつの言葉でピンときた。

 「お前、魔力持ちか」

 「まりょく??」

 知らなかったか。偶にいるからな。

 「あー、説明が難しいが……お前みたいに傷がすぐ治ったり重力を操ってみたり、水が出せたり火を吹いたり、とにかく“普通の人間”にできないことが出来る奴の事を人間は“魔力持ち”って呼んでんだ。んで、そいつらがその普通の人間に出来ないことをする為に使う力が“魔力”だ」

 厳密には違う様な気もするが、ガキにも分かりやすくするならこれくらいざっくりした方が良いだろう。

 「ふーん?」

 理解できているのかどうか怪しい返事をしながらも一応は頷いている。

 ただ、そうか。魔力を知らないって事はこいつ多分魔力制御もしてねぇな?

 この距離でもほぼ感じないくらいの魔力量だし暴走してもたかが知れてると思うが……いや、でもこいつあの高さから落ちた怪我を最低でも一晩で治せるんだよな……??やっぱり崖から落ちたってのは揶揄われてるだけか?でも、それだとこの服の血は……?

 「ぼくね、しってるよ。」

 沈み込んだ思考に急に割り込んできた声に驚く。

 「ルタスさんは“精霊”でしょ」

 続く言葉に更に驚いた。

 こいつ、“魔力”は知らなくて“精霊”は知ってるのか。

 「そうだが、何で分かった?」

 見た目は人間と変わらない筈だし、特段人間から見て変わった事もしてない筈だ。魔力を知らないやつなら俺の魔力量を見ることも出来ねぇだろうし……

 「んー、なんとなく?」

 「何となく、かぁ……」

 何となくで魔力も知らないようなやつに擬態を見破られるのは流石にプライドが傷つく。

 「何となくでも、何かないか?他と何か違ったとか、こういう感じがした、とか……」

 「ルタスさんのところだけ、なにもないから?」

 何も無い……魔障壁張ってるからか?てことはつまり、

 「お前、魔力見えてるのか」

 「このもやーってしたやつ?」

 「そう!それだよ!それが、魔力。かなりしっかり見えてんじゃねぇか」

 「っ!!ぼく、すごい?」

 「あぁ。すごいな」

 誰に教わったでもなく魔力を見れる人間が居るのか。それに、これだけの魔力濃度の場所で平然としてるし……!?

 「おい、お前、具合悪くねぇか!?」

 ぼく、すごい!ぼく、すごい!と呑気に喜んでる所を見るにまだ大丈夫そうだが、この呑気さのせいですっかり忘れていた。

 耐性のない人間なら即卒倒してもおかしく無い魔力濃度のこの場所で魔力持ちとはいえ障壁もなしに居るのは命に関わりかねない。

 あわてて障壁を張ってやると「おー!なにもない!」と手を振り回して遊び始める。

 取り敢えず、元気そうだということは分かる。

 ほぅ、と一息つけば、また新しい疑問が浮かんでくる。

 「お前、名前なんて言うんだ?」

 今更過ぎる疑問だった。ついついお前で済ませていて忘れていた。と言うか他のインパクトが強すぎて聞きそびれていた。

 「なまえ…………………………おまえ?」

 「は?」

 「だって、ルタスさんがそういってた」

 「いや、それは悪かったけど。」

 また、揶揄われているのか?

 「そうじゃなくて、ちゃんと名前教えてくれねぇとずっとお前って呼ぶしか無いだろ」

 「んんーーー……………………………???……………………わかんない?」

 かなり長い間頭を捻っていたかと思えば、心底困り果てたようにそう言った。

 名前が無い、のか?

 「お前、親は?」

 「おや……?…………わかんない?」

 「お前の父さん、母さんはどこにいる?」

 「…………………………わかんない??」

 捨て子、か?

 捨て子にしてはおかしな部分も多いが、そう言われるのが一番しっくりくる。

 「あ…、崖の上は。崖の上で何してた?」

 ふと、思い出す。そうだ。こいつ崖から落ちてきたって言ってるんだ、それが本当なら崖の上に親じゃなくても、こいつを探してる奴が居るだろ。何で最初に気が付かないんだ!

 「ん?ホシをみてたの!」

 「1人でか?」

 「うん」

 「じゃあ崖に来る前は何処にいた?近くに村でもあるのか」 

 村の孤児院か教会の子供ならまだ納得もいく。抜け出して星を見てたら迷って落ちた。分からなくもない話だ。

 「むら、あるよ」

 やっぱりか。

 「じゃあ、話は早いな。帰りたいだろ?付いてこい」

 善は急げだ。まだまだ質問攻めにしたいくらい不思議なやつだが、探してる人間がいるやつを引き留めておくのは忍びない。

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