血まみれのそいつ
余りの勢いに忘れかけていたが、明らかにこんなに動き回れるはずがない血を服に滲ませていた事を思い出し、肩を掴み返す。
急に掴み返されたことに驚いたのか、そいつは目を白黒させているだけで、頭の上には?が浮かんでいるように見える。
「お前、その血、怪我してんだろ!?んな動き回って大丈夫なのかよ!?」
「ッ!!…………………………………………みた?」
サッと顔色が変わったそいつは何かに怯えるみたいに少し距離をとる。
「見たって?怪我のことか?まだ見てねぇから心配してんだよ」
「ほんと??」
「本当」
「よかったぁ!じゃあルタスさん、トモダチになって!!」
何がじゃあなのか分からない。
取り敢えず生死に関わるような怪我はしてなさそうだということは分かったが、ならこの服の血と地面の血溜まりは何なのか。
そもそもこんなところで何で身一つで転がっていたのか。
こいつは何者なのか。
何処から来たのか。
疑問ばかりが浮かんでくる。
「ルタスさん??どうしたの?」
とりあえず、黙りこくった俺の顔を覗き込み不思議そうに眉をよせるそいつは、悪い奴では無さそうだ。
よく当たると噂(俺の中でだけだが)の俺のカンがそう言っている。
「色々聞きたいことはあるが……腹減ってないか?うち来いよ。」
そう言えば昼飯を食いに戻ろうとしてたんだったと思い出し、立ち上がる。
「おい、オビも!帰るぞ!」
カエルでも見つけたのか、また茂みの方で遊んでたオビはすぐに駆け寄ってきたが、こいつは立ち上がる気配もなく目を見開いていた。
「どうした?腹減ってないのか??」
軽く声をかければ結ばれた口が少し動く。
「おうち、いっていいの??」
「は?お前、あれだけ友達になってって煩かったのにそんなとこは遠慮すんだな。だめなら誘わねぇよ。それともあれか?俺の飯は食いたくねぇか?」
「〜〜〜〜〜ッ!!!ありがとう!!ごはん!ごはん、たべたい!!」
目を輝かせてものすごい勢いで立ち上がるのを見るに、本当に怪我はなんともないらしい。
「自分で歩けそうだな、じゃあちゃんと付いてこいよ」
「はーい!」
「ワンッ!!」
返事が一つ増えるだけで随分と賑やかになるものだな、何てことを考えながら小屋へと歩いた。