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始まりの記憶  作者: 山田なお
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落ちてきたモノ

 昨夜、何処からか聞き慣れない音が聞こえた。

 熊や狼なんかの鳴き声ではないし、雷にしては小さすぎたように感じる。

 木が倒れた音が一番近いような気もするが、周ってきた感じ新しく倒れた木は無さそうだし、これ以上遠くを見て回ってもあれだけの音が俺の家まで届くとは思えない。

 「オビ!帰るぞ」

 一度仕切り直そうと草影に消えていった相棒に声をかけるが、戻って来る気配はない。

 「オビ?飯にするぞ!」

 ……………………帰って来ない。

 いつもならイタズラしていようが蝶を追いかけていようが飛んで来る、あの食いしん坊が。

 「何やってんだ、あいつ?」

 仕方なく遠くから聞こえてくる鳴き声の方へ歩く。

 ……出来るだけ短距離で行こうと物臭をして直進をしたのが悪かった。

 あいつだから通れたんだな、と種族の違いを痛感させられるほど酷い道をツタを切りつつ、枝を払いつつ進む。

 やっとの思いで開けたところに出れば、見慣れた黒い毛皮が見える。

 「おい、オビ!お前飯そっちのけで何やってんだよ」

 そう声をかければ、「あ、ご主人やっと来た。まったくどんくさいな」と言わんばかりに一声鳴いて近づいてきたかと思えば「こっちだよ」と俺のズボンを噛んで引っ張って行く。

 見れば、土の中に土とはまた違う茶色の何かが転がっていた。

 近づくほどに見えてくるその何かが人の形をしていると理解が追いついたのは手で触れられるほどの距離になってからだった。

 「なん、で、んなとこに人が……?っておい!あんた!生きてるか!?」

 疑問が先に出てきたが、それよりも“血まみれで転がっている人間”を見たときにする事は安否確認だと思い直す。

 うつ伏せのせいで顔が見えないが無理に動かして怪我が悪化しても困るし、取り敢えず肩を叩いて反応を見る。

 「………ん、……もうあさぁ?」

 「うおっっっ!!?」

 ピクリとでも反応があれば御の字と思っていただけに、寝床から起き上がるみたいに起きて来られると化け物にあったみたいな反応になる。

 ペタン、と女の、特に子供がする座り方になったそいつは眩しそうに目を瞬かせている。

 「んぅ……??あれ、ここどこ?」

 状況が理解できていないのか、焦点の合わない目で辺りをぐるりと見回し、俺と目が合う。

 と、さっきまでのぼんやりとした視線は何処へやら、限界まで瞼が上がってゆく。目玉が零れ落ちるんじゃないかってほど開かれた瞳は光が差し込みキラキラして見える。

 「おにいさん、だぁれ!?」

 若干風を切る音が聞こえるような勢いでそいつの顔が近づいて来る。はやくはやく、と言わんばかりに俺の返事を待つそいつに圧倒され口が勝手に動く。

 「俺、はルタス」

 「ルタスさん!ぼくのトモダチになって!!ぼくね、トモダチがほしいの!だからね、ルタスさんがぼくのトモダチになってよ!いいでしょ??いっしょにトランプしようよ!あとね、シーツもって!!あ、おいかけっこもしたい!!!」

 「……………………は?」

 余りの勢いに思わず声がでた。

 ガックンガックンとさっきの俺の倍は力が入ってるんじゃないかって勢いで肩を揺らされ脳が混ざる。

 ちょっと待て、と言いたいけれど凄い力で頭が振り回されるせいでそれすらもままならない。

 そんな、目が回りかけている俺をよそに血まみれのそいつは楽しそうにしたい事を語り続ける。

 ん?

 「ッッおい!!!お前ッ!大丈夫なのかよ!???」

 「んぇ?なにが???」

 

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