魔力暴走
朝食を終え、村に行く支度を始める。
と言っても食器を片付けたりノアに上着を着せたりするくらいだが。
「おっきい!」
俺の古着を引っ掛けて、余った袖を振り回しながら部屋中を駆け回る。
「ほら、そろそろ出ねぇと村長待たせちまうだろ」
自分の上着に袖を通し鞄を引っ掛けて振り返った時だった。
バタリ、と勢いよくノアが転んだ。
「ったく、何やってんだよ。……立てるか?」
若干呆れながらも近づいてしゃがみ込む。
「……おい?」
返事もなく、若干震えてるのを見て泣くほど痛かったのかと肩を揺らしてみる。
それでも返事はなく、代わりに震えが酷くなり始める。
背中が大きく上下し、呼吸が荒くなっているのも分かれば、慌てて身体を動かして仰向けにさせる。
「おい!どうした!?」
真っ青な顔で浅く速い呼吸を繰り返すノアは固く目を瞑って苦しそうに顔を歪めている。
異変に気が付き飛んできたオビが汗の滲む頬を舐めるが、全く反応する気配もない。
「オーバードーズ…?」
覚えのある症状にピンとくる。
だとすればここまでになってるのは危ない。
探るようにノアの魔力を視れば、いつ魔力爆発を起こしてもおかしくない程の魔力が体内で渦巻いていた。
「まずいな、これ。…取り敢えず、何だ?誘導…の前に家から出さねぇと、てか魔力誘導だけで間に合うか?薬はねぇし…魔石!あったよな、あれも使えば…!」
纏まりきらない思考の中毛布を引っ掴み外に飛び出し、そっとノアを置けばまた直ぐに小屋へ駆け戻った。
何処にしまい込んだか分からなくなった魔石を求め、抽斗をひっくり返し戸棚を開けて掛け布団を引っ剥がす。
1分と経たずに空き巣が入ったようになっていく部屋の僅かに残る床を踏みながら、手当たり次第に物を手に取っては放り投げていく。
「クソッ!!どこいったんだよ…!!?」
焦りばかりが先んじて嫌に重く鈍い動きになっていく手足を無理矢理動かして、掻き分けた抽斗の中身を皿のような目で覗き込んでいた時だった。
「ガウッ!!!」
鋭い鳴き声とともに足に衝撃が走った。
見れば、オビが何かを咥えていた。
「……それかっ!!!でかしたオビ!!」
言うか否か、オビから奪い取るように魔石を掴み、ノアの元に駆けていく。
ガチャガチャと足元で壊れていく何かも、スライディングして穴が空いたズボンの膝も無視をして俺は即座に魔石を当てた。
石が触れた瞬間、ノアの魔力が吸い込まれていく。
渦巻いていた魔力がものすごい勢いで1点に向い、周囲の魔力濃度がガクリと下がったように感じる。
吸収が終われば緊急性は下がる。
そう考え、少し余裕ができた俺は、徐々に光を放ち始めた魔石に目を向けた。
瞬間、気がついた。
「……これ、ちがっ……」




