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始まりの記憶  作者: 山田なお
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日課と特別

 いつものとおり、朝日とともに出てくる小鳥とじゃれるオビの声で起きる。

 見慣れた天井、見慣れた部屋。

 いつもと違うのは、ベッドのすぐ近くで布団に包まる子供がいる事。

 昨日の夜、よほど嬉しかったのか遅くまで自分の名前を何回も練習していたからかオビの声では起きる気配は無い。

 物凄く満足そうに笑いながら眠っている。

 ……昨日の村長との話じゃ何も解決しなかった。こいつが星霊と言うもの自体を理解していない可能性もあるが、やはり魔力からみても人間で間違いないのではないかと思う。

 だが、それはそれでおかしな点が多すぎる。

 名前も両親も覚えていないし、そのくせ精霊は知っていた。

 単純な記憶喪失では無いのだろう。

 それに、村の人間にこいつが見えていない理由も分からない。

 村長も村の他の人間も前はあいつの事が見えていたらしいし……。

 誰かが認識阻害をかけているとして、それはなぜ?

 …………いつから見えなくなったのかノアに聞いてみるか。

 時系列で並べていけば何か分かるかもしれない。

 このまま1人で考えていても仕方がないな。

 取り敢えず思考に区切りを付けて起き上がる。

 まだ日が昇ったばかりだ。下手に音を立てて起こさないようにゆっくり動く。

 外に出れば、ツンと冷えた空気で寝ぼけ気味だった目がすっきりと覚める。

 今日は少し空気中の魔力が少なくて息もしやすいように感じる。

 グッと伸びをして日課の魔力鍛錬を始めれば、鳥とじゃれていたオビも俺の向かいで準備を始める。


 ───体の中を光の粒が巡る感覚。魔法を扱う基礎の基礎だ。毎日欠かさず行わないと意味がない。この魔力循環がどれだけ馴染んでいるかで、魔法の展開速度や完成した魔法の質に大きな差が出る。元から体内に巡る魔力と空気中から吸収する魔力の循環を意識しろ。皮膚から入ってきた魔力は手足を、腹を、脳を、心臓を、経由して全身を巡り空気中へ還っていく。


 一言一句違うことなく思い出せるほど何度も聞いた師匠の言葉。この言葉を20繰り返し、閉じていた目を開けば、世界が少し鮮やかに見える。

 オビも、準備が出来ているみたいだ。

 ひと呼吸置いた次の瞬間には光の矢がオビへと降り注ぐ。俺の魔法の中でも一番速く、一番数を出せる広範囲への攻撃魔法。

 それをオビは躱し、弾き、噛み砕き、時に魔法で相殺する。

 降り注ぐだけの矢に追尾や空中破裂の命令を追加すれば、一気に動きが複雑になる。

 が、オビも負けじと付いてくる。更に速度を上げ躱し、砕きながら俺の喉元へ牙を向ける。

 薄く魔力で覆った腕でそれを防げば、間伐入れずにオビの尻尾が脇腹目掛けて振り回される。

 魔力膜じゃ防ぎきれないと判断し、体を捻りながら横へ飛び、尻尾を蹴り上げる。

 その反動で上半身が下を向き世界が逆転するが、丁度いい。目線の先、真っすぐに着地するオビが落ちてくる。右手を地面へ、左手をオビへ向け、拘束の魔法を放つ。

 ドサッと言う音と共に土煙を上げてオビが地面に倒れる。

 今日は、俺の勝ちだ。

 魔法を解きオビの様子を見に近づけば、「参りました!流石ご主人!でもワタシも頑張ったからご飯沢山ぐださいね!」と言っていそうな具合にブルブルと体を震わせこちらを見ている。

 「よし、何か狩りに行くぞ」

 「ワフッッッ!」

 元気よく返事するオビをひと撫でし、軽く汗を拭いて荷物を持ち、今日の分の食料を探しに森へと入る。

 ……今日は1人多いから、少し多めに取れると良いな。

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