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守護獣調伏

「守護獣……ね」


 確かに、世界樹の太い枝を見上げると、数々のモンスターが棲みついているのが見えた。


 俺は偽物の海図を取り出した。アルハスラの書いた、ヨハンナの署名が記されている。これを使うか。


 俺は適当に、【黒田大河に守護獣の使役を許可する】と書き、ヨハンナのサインを書いた。


「ほら、五柱神の一角、ヨハンナ様の勅命だ。俺に力を貸せ、守護獣ども!」


 羊皮紙を掲げて叫ぶと、カサカサと枝葉が揺れた。


 次いで、翡翠色の翼をもつ、一体の巨鳥が舞い降りた。


「ほう、風の精霊、アイオロスか。考えたね。彼の力を借りて私を倒そうというわけか」


 アヴァロンはなぜだか嬉しそうだ。


 アイオロスが鳴くと、俺の全身に風がまとわりついた。かなりの気圧を感じる。これなら行けるか?


 俺はそのままアヴァロンに殴りかかる。紙一重で避けられたが、紙一重では不十分だ。俺の腕にまとわりついた風がアヴァロンに当たり、彼を吹っ飛ばした。


 初めて有効打が入ったな。


「そうか。風の鎧を纏っているのか。これなら私の方から攻撃しても、君が傷つくことはないな。つまり、」


 アヴァロンはようやく拳を構えた。


「存分に拳を振るえるわけだ」


 それからはスパーリングの連続だった。結局、休憩込みで一日かかってアヴァロンを倒した。アヴァロンは何やら中国拳法の使い手だったようで、俺もいつの間にその技を覚えてしまった。というか、覚えるほどにしつこく繰り出された。


「完敗だ。実はね、君のような旅人が来た時のために、世界樹の苗木を5つほど用意していたんだよ」


 まるで俺の動きを予知していたかのような物言い。ファルグスと同じだ。気味が悪い。


「ありがたく受け取ってくれ。それと、君はここで多くの技と守護獣を手に入れた。この先荒事に巻き込まれても、苦労しないだろうね」


「どうかな。却って面倒ごとに巻き込まれそうな予感しかしないが」


「そう言うな。こんな経験、なかなかできるものじゃないよ」


 アヴァロンは柔和な笑みを浮かべ、俺に苗木を持たせた。


「結構かかったわね」


 ちょうどアルハスラも帰ってきた。


「お前は何もしてないだろ。というか、お前が決闘してれば一瞬で済んだ話じゃないのか?」


「そうかもね」


 アルハスラは興味なさげに答えた。


 こいつ、俺が命の恩人だということを忘れていないか?


「なんにせよ、ありがとうございました。大河を鍛えてくれたようで」


「とんでもない。聖女様に感謝されるほどのことはしていませんよ」


 アヴァロンはアルハスラの正体を知っていたのか。俺は聖女の同行者なんだから、素直に苗木を渡せばいいものを。


 不満はあるが、戦果は大きかったので、俺たちは早々に出発した。まだ西方には戻れないが、そろそろ貯めた金で豪遊したいところだしな。ま、この世界のメシには期待していないが。


「言われた通り、彼を鍛えましたよ。ファルグス様」


 黒田の旅立ちを見送りながら、アヴァロンはそう呟いた。


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