★ショートコント★『五円探し』
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ショートコント★パート5
『五円探し』
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夕暮れの町中を下校途中の男子高校生が連れだって歩いている。
人気の無い住宅地の道路には、2人の足元から伸びる長い影が、行く手に暗い色を落としていた。
男子高校生1「なぁなぁ、『五円探し』って知ってる?」
男子高校生2「五円探し?ナニソレ?」
男子高校生1「都市伝説だよ!最近出るらしいぞ」
男子高校生2「何が?」
男子高校生1「不気味な女の怨霊が!」
殊更低い声で、恐ろしげに話す男子高校生1。
男子高校生1「隣町に縁結びの神社あるだろ?そこに夜な夜な出るんだってさ。不気味な女の怨霊が。『五円、五円、五円がないの~』ってぶつぶつ唱えながら神社の周りを徘徊してるらしいぜ。その女を見た者は、怨念で呪い殺されるらしい」
男子高校生2「へぇ~」
男子高校生1「おまえ、信じてないだろ!?ほんっとに出るんだって!いいか?その女を見掛けたら、五円玉を差し出して、『五円がありましたね』って笑い掛けると殺されずに済むんだとよ!コレ、やるから持っとけよ」
そう言って、五円玉を握らせようとする男子高校生1。
男子高校生2「いいよ、要らねーって!」
そんな言い合いをしてる内に別れ道に差し掛かる。
男子高校生1「いいから持っとけって!いいか?その女を見掛けたら、『五円がありましたね』って言って渡すんだぞ!」
そう言って、五円玉を押し付けると、あっという間に走り去っていく男子高校生1。
男子高校生2は、その背中を見送りつつ、不満顔で五円玉をポッケに突っ込んだのだった。
その日の夜、10時過ぎの事だった。
男子高校生2が、塾帰りに件の神社に通り掛かったその時。
不気味な女「五円……、五円……」
ぶつぶつ言いながら、長い前髪で顔の隠れた不気味な女がこちらへと向かってくる!
背を丸め、俯きがちにふらふらと彷徨う様子はまさに亡霊といった有り様だった。
この時ほど、男子高校生2が、男子高校生1に感謝を覚えたことはなかった。
男子高校生2は、不気味な女に五円玉を渡し、「五円がありましたね」と、言うが早いかダッシュで逃げ帰った。
結果、男子高校生2が呪い殺されることはなかった。
何故なら、不気味な女はただの人間で、男子高校生1の姉貴だったからだ!
毎日のごとく「彼氏が出来ない」と嘆く姉にうんざりし、運命の出会いを演出したかったらしい。
その後、男子高校生2は、取り憑かれたかのように、不気味な女に付き纏われる毎日を送り、全ての元凶である男子高校生1を呪っているという噂である。